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出演者、スタッフが連続告白!『らんまん』を新発見する

植物の名前縛りの「週タイトル」にも知られざるこだわりが…『らんまん』脚本家が明かした「朝ドラの舞台裏」

植物の名前縛りの「週タイトル」にも知られざるこだわりが…『らんまん』脚本家が明かした「朝ドラの舞台裏」

『らんまん』脚本家・長田育恵さんインタビュー

2023/09/08
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サブタイトルへの強いこだわり

 毎週のサブタイトルである植物の名前も、この物語を彩る大事な要素だ。筆者が本作の制作統括・松川博敬氏にインタビューした際、「毎週サブタイトルを植物の名前で縛るとなると、かなり大変な作業になってくるのではないか」と懸念したと語っていたが、何としても植物の名前で通したいという、長田氏の強いこだわりがあったようだ。

「万太郎が生涯をかけて植物図鑑を作る物語なので、最終回まで見終えてすべてを見渡したときに、週タイトルも含めて植物図鑑のようになっているといいな、と思ったんです。『らんまん』は植物学者の物語ですが、植物を発見するだけの話にすると、その時点で植物に興味がない視聴者は飽きてしまう。植物と人間を結びつけていくという構想は、企画のかなり初期の段階からありました。サブタイトルのつけ方には、大きく分けて3通りあります。

(1)人間と結びつく植物

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 第1週の『バイカオウレン』は、母・ヒサ(広末涼子)との思い出であり、万太郎の原点。このあとのどこかの週で登場する『スエコザサ』は、愛妻・寿恵子(浜辺美波)への感謝の気持ちを表した植物です。また、キャラクターを象徴するというやり方もありました。第5週の『キツネノカミソリ』は、万太郎と綾(佐久間由依)に『自由』を教えた活動家・早川逸馬(宮野真守)の魂のように、燃えるような朱色。こうした、人との出会いを印象的に彩る役割としても植物を使っています。

「バイカオウレン」は、母・ヒサとの思い出であり、万太郎の原点 ©NHK

(2)業績を表した植物

 万太郎の業績となる植物を、そのままサブタイトルに持ってきた週も数多くありました。第15週『ヤマトグサ』、第16週『コオロギラン』、第17週『ムジナモ』など、中盤の業績ラッシュではこのパターンが続きました。こうした“物理的”なサブタイトルがつく週は、その代わりに人間関係の綾で、その週のテーマに到達するように心がけました。業績自体がメインではなく、人間関係を描ききったうえでの、最後にもたらされるものとして、植物を機能させたかったので。

(3)自由度の高い植物

 私が『こういう文脈で使いたい』というのがはっきりしていて、『文脈に合うもので、今用意できるものは何ですか?』というオーダーを、植物チームにお願いするパターン。たとえば、愛娘の園子が夭折してしまう第18週の『ヒメスミレ』は、

・小さな子どもの目線の範囲に咲く花
・長屋の中庭にも自然に咲くようなもの
・人々にとって身近な花

 という条件を満たし、なおかつ、撮影の時期に用意できるものということで、候補に挙がった中からチョイスさせていただきました。