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「『できない』というのが、当時としては当然のことなんですよね。そうした『時代の限界』を描くことで、そこから突破したいと思う『力』が、鮮やかに描き出せると思いました。障壁を打ち破りたいという強い願いを重ねてきた人たちの行動の結果として、今、私たちがここにいます。

 翻って、昔の人たちの願い続けてきたことが、今の私たちには叶えられているのかと問われると、残念ながらそうとは言えないところもありますよね。綾のように、当時の世間一般の『物差し』の範疇からは外れた人、道なき道を自分で切り拓いて生きる人を描くことで、現在にも地続きの話になればいいな、と思いました」 

万太郎の姉・綾 ©NHK

『らんまん』の登場人物たちは誰しもが物語の中で活き活きと生き、その人らしい言葉を発する。聞こえてくる台詞はシンプルでわかりやすいのに、言葉のひとつひとつが磨き抜かれていて、本質的で、心のど真ん中に届くようなものが多い。こうした台詞群はどのようにして生まれたのだろうか。

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「これはもうひとえに、演劇の稽古場で培ってきたこと、肝に銘じてきたことの集大成だと思います。私は常々、『俳優がtrust(信用)を失わない言葉』を書きたいと思っていまして。俳優が実感をともなって言える言葉、上滑りせずに、全体重を乗せられる言葉というものを心がけて紡いでいます。

 言葉数が多すぎると芯が失われ、かといって足りなくてもいけない。その人物がどんな人間であるかは、『どんな言葉を使っているか』で切り出していくしかない。台詞は、その人物の形を彫り込んでいく彫刻刀のようなものだと思います。登場人物が生きるための『言葉』──私自身、痛い思いをしながら身につけてきたことです」

「すべての登場人物が、最後まで自分の冒険を続けていきます」

 物語はいよいよ大詰め。最後に、視聴者へのメッセージを聞いた。

「このドラマには、槙野万太郎が生きとし生けるものすべての、ありのままの特性を見つめて、その特性を愛し抜くという眼差しが、全編に貫かれています。植物がそうであるように、自分で選んだ人生を咲き誇っていこうとする人たちの物語。すべての登場人物が、最後まで自分の冒険を続けていきます。万太郎と寿恵子、それから周りの登場人物たち、それぞれの行方を、最後まで楽しみに見守っていただけるとうれしいです」