主人公が何を考えているかわからないし、うっかり感情移入して観ていると主人公に裏切られた気分になる事態が繰り返され、視聴者は大混乱。ドラマ終盤に入った現在でも主人公の目的がわからず、この作品自体、どこをゴールに走っているのかもわからないという稀有な構成になっているのです。
もちろん視聴者が大混乱していることこそ、大ヒットの理由と言えるでしょう。SNSなどを中心に考察ブームが巻き起こり、誰かと語り合いたくてうずうずする視聴者が続出しているのです。
(5)二重人格設定がまだ活かされていない
主人公に謎が多いという要素にもつながることですが、乃木は第1話の段階から二重人格であることが描写されていました。
温厚で気弱な主人格に対して、「F」と呼ばれる別人格は気性が激しく好戦的なタイプ。ただ第8話まで観ていても、この二重人格設定が存分に活かされていないことがわかります。
というのも、たとえば主人格のほうは戦闘能力が低く、別班のミッションをこなすときや格闘・銃撃戦の際には「F」に切り替わるというのであれば、エンタメ的に二重人格要素を活かしやすいでしょう。
しかし、普段は気弱な主人格は能ある鷹が爪を隠しているようなもので、本当はめちゃくちゃ有能で充分強く、主人格のままでも別班のミッションをこなせています。ですから、いまだに「F」の能力は未知数なのです。
となると、残り2話で「F」にフィーチャーされていき、二重人格設定が大きくストーリーに関わってくる可能性は大。あくまで個人的な予想ですが、これまでは利害関係が一致しているように見えていた主人格と別人格が袂を分かち、実は「F」には裏の目的があるなどしてラスボス的ポジションになっていく可能性は、なきにしもあらず。
このように、終盤になっても二重人格設定の見せどころを温存しており、いまなお「F」がベールに包まれていることが、視聴者の興味を惹き付ける要素になっているのです。
いずれにしても、まだまだ多くの謎が包み隠されており、張り巡らされている伏線も多数あると思われるため、存分に自分なりの考察を展開させる楽しみが、最終回までに残されています。
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9月6日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および9月7日(木)発売の「週刊文春」では、「文春“別班”が本気で追った 『VIVANT』9つの謎」と題し、堺雅人や二階堂ふみ、阿部寛ら主要キャストの知られざる秘密など、7頁にわたって同作の大特集を掲載している。さらに「文春オンライン」でも、『VIVANT』に関する記事を多数配信する予定だ。