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 ここであらためて、あらすじを振り返りましょう。

 主人公は大手商社に勤める乃木憂助(堺雅人)。140億円の誤送金事件の罪を負わされそうになり、送金先の企業がある中央アジア・バルカ共和国へ行くも、現地でテロ組織が関わる爆破事件に巻き込まれてしまいます。

 このときテロ組織の幹部が乃木に、「お前がヴィヴァンか?」という謎の言葉を残していました。爆破時に日本の公安警察・野崎守(阿部寛)に助けられ、彼らと協力しながら日本に戻り、第4話の終盤で誤送金事件の真犯人を追い詰めるのです。140億円の誤送金事件に端を発したストーリーですが、その本筋は国際的テロ組織「テント」との対決であり、実は乃木と黒須駿(松坂桃李)が別班メンバーであることが明らかに。

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 第2話の段階で、モンゴル人が「BEPPAN(別班)」を読むと「ヴィヴァン」によく似た発音になるということに野崎が気づき、“ヴィヴァン=別班”なのではないかということが視聴者にも提示されていました。しかし、主人公が別班メンバーであり、別班の活躍を描く物語だということは第4話終盤まで伏せられていたというわけです。

 優しく気弱そうに見えていたサラリーマンの乃木が、実は任務達成のためなら非合法的な手段や殺人もいとわない別班だったと明かされて以降、物語は一気に、別班が活躍するダークヒーローストーリーにスイッチ。作品が“真の姿”を見せた瞬間は鳥肌ものでした。

 福澤監督は別班を題材にしたストーリーを構想するも、序盤は主人公が別班だということを隠しておきたかったため、直接的な関連の薄いフランス語をタイトルに冠したのではないでしょうか。視聴者は、一本取られたとばかりに驚嘆しつつ、さらにこのドラマへ興味を惹かれていったのです。

(4)いまだに“主人公が一番謎だらけ”

謎だらけの乃木(公式HPより)

 本作はとにかく謎が多いのですが、最大の謎はなんといっても乃木憂助自身の本心や目的。

 主人公に感情移入させて視聴者を物語に惹き込んでいくのがオーソドックスなドラマの構造と言えます。主人公の胸中や、目指しているゴールを明確に示すことで、視聴者は気持ちをリンクさせることができますが、『VIVANT』の手法はその真逆。主人公が何を考えているのかが、一番わかりません。

 最大の衝撃回となった第7話終盤で、とんでもないどんでん返しが待ち受けていたのです。「テント」幹部・ノコル(二宮和也)の目の前で、乃木が同行していた別班メンバー5人を突如銃撃。裏切って「テント」に寝返ったのです。

 第5話終盤で、「テント」のリーダーであるノゴーン・ベキ(役所広司)が、亡くなったはずの乃木の実父だと判明していたのですが、乃木は父に一目会いたい一心で、仲間たちも日本も裏切ったのでした。

 これが第8話までの状況ではあるものの、乃木が本当に別班を裏切ったのか、それとも裏切ったように見せかけているだけなのかは不明です。