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「東山新社長に相談できる機会というのはなかった」…ジャニーズ事務所の記者会見を直後にテレビはどう報じたか

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2023/09/12
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ジュリー氏と東山氏が登場すると…

 しかし会見が始まってすぐ、藤島ジュリー景子前社長が、新社長の東山紀之氏とともに登場した。「記者会見をそのまま生放送する」方針を決めて、放送を続けたと思われる局がNHKとフジテレビ、テレビ朝日だった。アナウンサーが登場したのは会見が始まる前だけで、あとはほぼ、番組の最後まで記者会見の映像と音声を放送し続けた。

 記者会見で新社長の東山紀之氏が「性加害について認識していたのか?」と記者から質問され、「私自身は被害を受けたことがなく、(被害を)受けている現場に立ち会ったこともなく、先輩たちからも後輩たちからも相談がなかったので、噂という認識はありましたが、自ら行動するということはできずにいました」と答えた時、二元中継されていた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のメンバーが失望したように首を振る様子がワイプ画面内で放映され、被害者側の反応がすぐに読み取れた。

フジテレビ「イット!」9月7日より
NHKが特別編成で生放送した「NHK NEWS」9月7日より

 同じくNHK、フジテレビ、テレビ朝日の夕方のニュース番組では、ジャニーズ事務所の記者会見に加えて、この直後に行われた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の記者会見の内容を伝え、企業のコンプライアンスやエンタメ業界に詳しい専門家などの解説を交えて報道した。会見終了後も、収録した会見映像をそのまま放送することに徹していたといえる。

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“付加価値”をつけた民放は?

 一方で、TBSと日本テレビは記者会見の中継は前番組の情報番組に任せて、夕方のニュース番組では他局にない“付加価値”をつけて報道した。

 TBSは情報番組「ゴゴスマ~GO GO!Smile!~」で生中継を放送し、続く夕方のニュース番組「Nスタ」で、生中継で会見の様子を入れつつもVTRでまとめて紹介した。スタジオには、200回以上も性被害にあったという元ジャニーズJr.の大島幸広さんを招いた。大島さんは、現在の思いや会見に対する感想をこう話した。

「しっかりした対応をしていただいて、活躍されているタレントの方たちを守っていただきたいと思います。(中略)お二方(藤島ジュリー景子氏、東山紀之氏)とも真摯にしっかりと謝ってくれたので、100の傷のうち10くらいは楽になりました」

TBS「Nスタ」9月7日より

 この日、東京海上日動火災保険がジャニーズ事務所所属タレントとのCMなどの契約を更新しないことを決定したというニュースが飛び込んできた。民放にとって、スポンサーがジャニーズタレントを起用するかどうかに関するニュースは自局の姿勢を問われる、重要かつデリケートなテーマだ。それだけに、これまでスポンサーが降りることなどがあっても実際にテレビのニュースにすることは避けてきた。タブーになっていたともいえる。

TBS「Nスタ」9月7日より

 会見当日から、「Nスタ」はこの事実をニュースにしていた。ジャニーズの性加害問題を放送局やスポンサー企業を含めた重大なテーマだと捉えているからという姿勢のあらわれだろう。

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