記者たちの質問とそれに答える側の真剣勝負が久しぶりに注目される記者会見だった。

「すべての質問者の質問に答える」という姿勢でジャニーズ事務所が行った9月7日(木)の記者会見は4時間以上に及んだ。午後2時から始まった記者会見が終わりそうになったのが午後6時近く。最終盤に記者たちの熱を帯びた不規則質問が相次いで、司会者が「以上をもちまして、記者会見を終了とさせていただきます」とたびたび幕引きを促したものの、新しく社長に就任した東山紀之氏がマイクの前で答え続けた。完全に終了したのは午後6時12分と報道された。

東山新社長はタレント業を引退するという ©AFP=時事

各局は「生放送」でどう伝えたか

 テレビは夕方のニュース番組の真っ最中で、なかでも民放各局は午後7時までのニュース番組の終了に向けて記者会見の映像を編集して放送に入れるべく、対応におおわらわだったはずだ。

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 テレビの最大の強みは「生放送」だ。生中継で今起きている現場から映像と音声を伝えることで、どんなに作り込んだ映像よりも力を発揮することがある。

 NHK、フジテレビは午後2時前から特別番組を編成して生放送で会見の様子を伝えた。NHKは東山新社長就任の速報を打ち、フジテレビは夕方のニュース番組「イット!」を前に拡大して「ジャニーズ事務所記者会見」を伝えた。テレビ朝日もドラマ再放送の枠を差し替えて情報番組「大下容子ワイド!スクランブル」の特別版を放送。日本テレビとTBSは午後1時55分から始まる2時間弱の生放送の情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ制作)と「ゴゴスマ~GO GO!Smile!~」(CBCテレビ制作)で会見の様子を伝えた。

 午後2時の会見開始時点では、NHKと民放4局(日テレ、テレ朝、TBS、フジ)が同時に生中継していたことになる。

ジャニーズ事務所 ©AFLO

予測不能だったジャニーズ会見

 実はテレビ番組を放送する側の立場を考えると、ジャニーズ事務所の記者会見だけで報道番組を生放送することは、予測不能でリスクが大きい。

 例えば首相の記者会見などを思い出してもらえばわかりやすいと思うが、記者会見そのものを放送して、「テレビ番組として成立する」内容なのかは事前に予測できない。テーマの重要性もさることながら、場合によっては無味乾燥でつまらない時間になってしまうことも考えられ、原稿を読み上げるだけの一方的な発表に終わりかねない可能性すらある。さらには、登壇する人物の会話力や主催者が質問する人をどう選別するのか、その手順や時間配分などをある程度把握していないと、記者会見を報道特番にすることは難しいと考えられる。

 こうした記者会見を報道する場合、「解説者」をあらかじめ決めておくことがテレビ番組の定石だ。ジャニーズ事務所の会見では誰が壇上に姿を見せるかもメディア側には事前に知らされてなかった。おそらく各局ともに、時間配分に困った場合は「この人がつなぎの解説をする」などといった役割分担を決めて、その担当者はスタジオなどで待機していたのではないか。