37歳の時に自身が「AC」(アダルトチルドレンの略。家庭環境などの影響で子どもらしい幼少期を過ごせなかったことにより、大人になってから生きづらさを感じている人)だと気づいた、女優・東ちづるさん(63)。母親に過度な期待を寄せられ、“いい子”を演じながら幼少期を過ごした東さんは、その影響で高校3年間の記憶を失っているという。

 彼女は自身のACと向き合うために、母・英子さんと2人で公認心理師・長谷川博一氏のカウンセリングを受け、“自分らしさ”を取り戻す。カウンセリング後は、それまで窮屈に感じていた母子関係も改善した。

 そんな東さんに、大人になってから感じていた生きづらさ、ACだと気づいたきっかけ、親子でカウンセリングを受けるまでの経緯などを聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く)

ADVERTISEMENT

東ちづるさん ©三宅史郎/文藝春秋

◆◆◆

同級生のことが分からず、次第に「あれっ」と思い始める

――高校時代の記憶がないことには、いつ頃気付かれたのですか。

東ちづるさん(以下、東) 芸能界に入って、インタビューなんかで高校の頃の話を聞かれたりしたときですね。ある時、番組のサプライズで出てきた高校の同級生のことがわからなかったんです。年上に見えたから恩師なのかなと思ったら「同級生だよ」と言われてしまって……。でもその同級生からすれば、そんなこと信じられないでしょ!?

――相手の方は、「同級生のことを忘れてる」と思ってしまうかもしれませんね。

 舞台で地方を回っている時に、広島からわざわざ楽屋に来てくれた人のこともわからなくって。絶対友達だったんだろうと思うのに、どうしてもわからない。それで次第に「あれっ」と思い始めて。

 頭の中に霧がかかっているような感じで「受験があったからかな」とか「楽しくなかったんだろうな」と思っていたんですけど、のちに出会うカウンセラーの長谷川博一先生にお話をしたら「東さん、よくがんばりましたね」と言われたんです。

――それはどういった意味で言われたのでしょうか。

 「私が弱いから記憶がなくなったんじゃないんですか」と聞いたら、先生が「自分を守るためにそうなったんですね」と言ってくれたんです。カウンセリングってすごいかも、と思いました。私の生き方を認めてくれたというのが。

 

めまぐるしく忙しい日々の支えは…

――芸能界に入ってからは、世間が思う「東ちづる」と、本当のご自身とのギャップを感じることはありましたか。

 「元気で明るくたくましい東ちづる」みたいなイメージがついたり「お嫁さんにしたい」というキャッチフレーズがつくことはとてもありがたいけれど、どこかで「私はこれをいつまで死守するんだろう」と。「このイメージを裏切っちゃいけない」というしんどさはずっとありました。