“オトナ未満女子”という当初のキャッチコピーにもあった通り、親になる有栖とは対照的に、瞳子が子どもを産まない人生を歩むことはなんとなく予感していた。だが、第1話では有栖の妊娠が判明するとともに、瞳子の子宮内膜症も発覚。瞳子が妊娠しにくい身体であることが明らかになる。
これまでの“深キョンヒロイン”が体現しつづけてきたこと
常にキャリアを重視してきた瞳子が「子どもを産まない」という選択をしたのではなく「子どもを産めない」という現実に直面するところから、物語はスタートした。それも40歳女性にとっての“リアル”なのかもしれないが、たとえ同じ結果だとしても「子どもを産まない」と「子どもを産めない」では意味が異なる。
第1話で瞳子が有栖に伝えた「あなたがそうしたいと思ったら、握力全開にしてすべてを手に入れなさい」というセリフは、まさにこれまで深田が演じてきた可愛らしさと強さを兼ね備えたヒロインたちが、作品内で体現しつづけてきたことだった。いつもの深キョンドラマならば、年齢もお構いなしに、握力全開ですべてを掴みにいくのだろう。有栖を鼓舞するだけではなく、瞳子自身が。
幼い子どもを抱えながらも、夢に向かって貪欲に進む有栖を目の当たりにすると、どうしても瞳子の物語は消極的に見える。対等であるべき二人の関係性が「仕事も結婚も子どもも諦めたくなかったが諦めざるを得なかった瞳子」が18歳の有栖に叶えきれなかった夢を託しているように感じて、なんだか切なくなってしまうのだ。
リスクを承知の上で不妊治療を考え始めた瞳子
だが、物語は後半で急変する。瞳子の母(片平なぎさ)に乳がんが発覚したことで、自ら子どもを産みたいという意志が強くなり、瞳子が不妊治療を考えはじめるのだ。以前は口うるさく結婚を急かしていた母も、パートナーの加瀬(上杉柊平)も子どもを望んではいない。同年代で産婦人科医の薫(松本若菜)が妊活を断念した一方で、瞳子は自身の身体にリスクがあることを承知の上で、不妊治療を検討する――。
瞳子が子どもを持つのか、そもそも不妊治療をするのか自体もまだ分からない。もちろん彼女と同じ立場で子どもを望む人もいるだろうし、その人たちにとっては希望にもなるだろう。しかしその結果になった場合「子どもを望めなかったはずの女」を「子どもを産む女」にすることが、今作の“優しさ”になるのだろうか。瞳子を“オトナ未満女子”と定義づけたのは、やはり子どもを産んでいないからではないかと、最初のキャッチコピー騒動が頭を過ぎる。
『18/40』が提示する女性の幸せとはなにか。瞳子たちの決断を見届けるとともに、今作が幕を閉じたとき、同じ女性の一人として、改めてこの物語の意味を考えたいと思う。