賄賂6万ペソの「VIPルーム」で悠々自適な生活
ビクタン収容所は、狭い部屋で収容者がすし詰め状態で過ごすなど、その劣悪な環境で知られている。だが、X氏によると、渡邉は毎月6万ペソ(訳14万円)を看守に支払って、個室の「VIPルーム」で過ごしていたという。この部屋は冷房が完備され、専用のガス台や洗面台、シャワールームなどがあり、ほかの収容者に比べて格段にいい生活をしていたようだ。
賄賂がはびこる収容所内。今村と渡邉は金にものを言わせ、毎晩のように酒を飲み、韓国人や中国人の収容者とともに賭けポーカーに興じていたという。
収容所内で遊ぶ金はどこから来ていたのか。
「今村と渡邉はもともと、2019年にフィリピンで36人が拘束された特殊詐欺グループ事件の幹部。2人は“共同経営者”のような形で、フィリピン国内でいくつかのかけ子グループを取りまとめていた。ただ、日本の警察もバカじゃないから特殊詐欺の摘発に力を入れていたし、銀行も犯罪抑止の対応を強化したから、だんだんと“タタキ”(隠語で強盗)に移行していったんじゃないかな」(同前)
X氏の話をまとめるとこうだ。
今村と渡邉はもともとフィリピンで活動する特殊詐欺グループの幹部だったが、事件の主犯格として日本の警察から逮捕状が出たため、ビクタン収容所に移送された。だが、この収容所では賄賂がはびこっており、多額の金を看守に支払うなどして携帯電話を入手し、平然と詐欺や強盗などの犯罪を続けていたようだ。
X氏は実際に、今村が日本にいる実行役に強盗の指示をしている場面を目撃したことがあるという。
「右に行け」収容所から図面を見て“強盗の指示”
「たしか昨年だったかな。耳にイヤホンを付けた今村が『そっちじゃない、右に行け』なんて言って、金の保管場所を日本にいる実行役にリアルタイムで指示していたんだ。もともと特殊詐欺をやっていたから、その過程で金品のありかに関する情報もあったみたいだね。家の図面みたいなものを見ながら指示していたよ」
特殊詐欺の過程で作成した富裕高齢者リストや自宅の詳細情報を強盗に転用していたということのようだ。