1ページ目から読む
3/4ページ目

人は終わる時までその人らしさを失わずにいられるんだな

「君が好きだと叫びたい! てゆうか何度も叫んだ!」

 彼女から突然の連絡が来たのが6月末でした。

 聞いたことのない病名。一緒に泣きました。

 なんで私たちみたいにがんばってる人間に来るんだろうなぁ。病気って本当に平等で嫌だなぁーって。皮肉だけど私たちを近づけたのは病気です。それから毎日、ラインとやらをしました。暇だから1日1時間くらいしました。おかげで量が半端ない。

「今使わずにいつ使うのだ」

「抗がん剤にそのセリフ使うの日本でここだけやな」

 ふざけた応酬。はたから見れば不謹慎なほど病状も治療もネタにして笑いました。

 一時退院の時、さびしいと言うのでマンションを訪ねたら、差し入れに持っていったカツサンドとシュークリームを瞬時に食べきり、ポテチとジャガリコどっちがいい?と出して来たスナック類を「私ら男子高校生かよ⁉」と言いながら食べました。

 まだ先は長い。しんどい時もあるだろうけどがんばる以外の選択肢がないならがんばろう。

 容態があまりよくないと連絡をもらって病室に行った時、君はでも、しっかりした意識で私を見て何か言ってくれました。

「あ……」って言ってた。いい、いい! 今は無理してしゃべらなくていい! 疲れるからー!って止めた。でも聞けばよかった。なんて言ってくれたの?

 それから数日後、君は亡くなりました。私が君と個人的に付き合った期間はとても短い。でもそれがやけに濃くて、しんどくて、愛しくて、整理がつきません。君のかわいい容姿と、おもしろくて気づかい屋の性格と綺麗な声と突き抜けた演技はこれからもずっと覚えています。

 考えてみればすごいことだね。君の声は、大勢の人の記憶の中にずっと残る。自分がいなくなった後の時代を生きる人たちにも届く。

 生きた痕跡を残すことが生きる目的だとは思わないけど、お芝居と、人を楽しませることが大好きだった君にとってこれは間違いなく幸せなことでしょう。

 夢を叶えて、たくさんの人に愛された君の人生はすばらしいです。さびしいけど、短期間でも君に寄り添えたこと、ちょっとでも支えになれたであろう(?)ことを私は自分の人生の中の自慢のひとつにして生きていくよ。そしてこれからも全力で君を褒めちぎるよ。覚悟しておくがいいよ。

 最後に発してくれた言葉は勝手に「ありがとう」か「愛してる」だと解釈して何度も反芻して君を忘れずに歩きます。

 松来未祐、君はとても素敵です。ずっと大好きです。

 2015年の秋に書いたブログ(一部抜粋)です。彼女との文面に残るやりとりは、今でも笑ってしまうほどコミカルです。最期のやりとりもギャグマンガのよう。

 人は終わる時までその人らしさを失わずにいられるんだな。この文面は私の宝物のひとつです。

ADVERTISEMENT

 2022年8月に「文春オンライン」に私のインタビューが載った時、すぐに彼女のお父様から優しいメールが届きました。このインタビュー記事を読んでくれたそうです。