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「ジャニーズ関連のものはすべてアンタッチャブルに」

「クロ現」の取材班は、NHKと民放の現役職員や元職員40人に話を聞いた。ジャニー喜多川氏と交流があったのか。キャスティングの基準はどういうものだったのか。取り上げようとした時に忖度や圧力はあったのか。性加害について認識していたのか……。様々なポイントを想定しながら聞き取りを行い、桑子真帆キャスターは番組後半から、その取材メモを貼り付けたパネルを背に進行していた。

クローズアップ現代(公式HPより)

 結果的に「性加害を黙認していた業界人のひとり」だとして、番組のインタビューに応じたのが元民放プロデューサーの吉野嘉高氏だ。1990年代から2000年代に民放キー局でニュース番組や情報番組を担当したが、ジャニーズ事務所の性加害問題は告発本などで認識していたという。しかし、スポンサー企業などへの配慮から当時ジャニーズ事務所の問題を放送で取り上げることはタブーだったと打ち明けた。

「ジャニーズは触れないということですよ。触ると大ごとになる可能性があるから。やり過ごしたほうがいいということが最初に言われたし、CMに出ているタレントさんも多いですから。営業(の部署)とかスポンサーさんとか、ジャニーズ関連のものはすべてアンタッチャブルにしていくと。そこから先は自動的にジャニーズネタが来たら、これは扱えないって瞬時に判断するようになっていく。そこにもう疑問も持たない。条件反射……」

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「結果的にはパンのほうを選択してしまった」

 ジャニー喜多川氏による性加害が「真実」であると裁判で確定した2004年。吉野氏は情報番組の解説者だったが、この時も報道すべきだと声を上げることはなかったという。

「できなかったわけではないんですよ。これは逃げたほうがいいなって……。打算でしょうね。例えばジャニー喜多川さんが逮捕された、あるいは逮捕令状が出されたという段階であれば、テレビは確実に報道していたと思います。でも、警察からそういう捜査を受けたという情報は僕は得ていないので自分の役割を超えているのかなと思っていた。

 報道しなかった結果、今のような事態に至っているので、責任ということで言えばその一端は(自分にも)ある。ペン(報道)かパン(利益)かの選択において、結果的にはパンのほうを選択してしまったのかもしれないと思っています」

NHK「クローズアップ現代」9月11日より

 吉野氏は民放テレビ局に勤務しており、利益の追求やジャニーズ事務所、スポンサーなどへの忖度が働いて、性加害について問題提起することはなかったと話した。