9月11日放送のNHK「クローズアップ現代」(以下、「クロ現」)では、「“ジャニーズ性加害”とメディア 被害にどう向き合うのか」として、NHKや民放などのテレビ関係者53人に取材を打診。そのうち元職員や現役職員ら40人から話を聞いている。

 ジャニー喜多川氏と交流があったのか。キャスティングの基準はどういうものだったのか。取り上げようとした時に忖度や圧力はあったのか。性加害について認識していたのか……。様々なポイントを想定しながら聞き取りを行い、桑子真帆キャスターは取材メモを貼り付けたパネルを背に番組を進行。その内容を少しずつ紹介していった。

 2004年前後にNHKのドラマやエンターテインメント部門にいた人は、どんなことを考えていたのか。

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「裁判を理由に、『ジャニーズの起用をどうしようか』と言えば、『お前、おかしいんじゃないの?』と言われるような時代だった」(NHK元音楽番組プロデューサー)

「(性加害については)『そういうこともあるのかな』ぐらいのうわさレベル。懸案事項として上ったことはない」(NHK元文化芸能番組の幹部)

NHK ©文藝春秋

「視聴者獲得のために清濁あわせのんでやってきた」

 一方で、時期をさかのぼると別の視点の証言も集まった。90年代にジャニー喜多川氏と親交があったというNHKの元ジャニーズ出演番組プロデューサーの証言だ。

「ジャニーさんの家に何度も行っていたから、子どもたちが泊まっていたことは知っている。でも、そういう“えげつない世界”や“性的な部分”は知りたくないと思っていた。視聴者獲得のために清濁あわせのんでやってきた」

「ジャニーズが使えなくなったら、ドラマも止まり、番組もできなくなる。どうするのか。考えるまでもなくNOだ」(民放元編成幹部)

「番組を横断して調整する“ジャニ担”という御用聞きが局内にいて、その人物以外はジャニーズの話題に触れてはいけないし、マネージャーに電話すらできない状況だった。もしクビ覚悟で取材できたとしても、放送はできなかったと思う」(民放元報道番組プロデューサー)

NHK「クローズアップ現代」9月11日より

 このほか「クロ現」では、長年、NHKの芸能やドラマ部門にいた元理事(民放では取締役に相当する)で退職後にジャニーズ事務所の顧問を務めてきた人物にも再三、取材を申し込んだ。性加害が見過ごされていたことへの見解を聞いたがこの点については回答を得られなかったという。