1ページ目から読む
2/3ページ目

「芸能ネタは民放や週刊誌に任せておけばいい」

 複数のNHK元職員に話を聞いて、共通するのが次のような声だという。

「事件化されて大々的に報道されていれば別だが、NHKも全く報道していない状態で、ジャニーさんを責める人はいなかった」(NHK元ジャニーズ出演番組プロデューサー)

「クロ現」の生放送では、この問題を取材するNHK社会部の松井裕子デスクが、判決が確定した時期にニュースにしなかった理由をNHKの記者らに尋ねた際の反応を紹介した。

ADVERTISEMENT

NHK「クローズアップ現代」9月11日より

「芸能ネタは民放や週刊誌に任せておけばいいし、NHKの報道では扱わないという風潮だった」(NHK元司法担当記者)

「判決を新聞記事では見た記憶がある。芸能ネタは自分たちのカバー範囲だという認識はあったが、文春報道に関しては、『芸能界の内輪の話だよな』と思っていた」(NHK元文化担当デスク)

 松井裕子・社会部デスクによると、この問題は週刊誌の報道、芸能スキャンダルだとみなされており、ニュースで扱うに値しないと考えていたという声も聞かれ、さらに性被害への認識の甘さ、特に男性の性被害への意識の低さがあったという。

「『性犯罪事件だ』という認識が欠落していた」

 桑子キャスターは次のように述べた。

「報道番組として30年前から放送しているこの『クローズアップ現代』でも、この問題を取り上げてきませんでした」

 続けて、その理由を過去の編集責任者に聞き取った内容を紹介した。

「当時、『性犯罪事件だ』という認識が欠落していた。メディアは、勇気ある実名・顔出しの内部告発や被害告発に対して真摯に耳を傾けていかなければならない」(2004年「クローズアップ現代」編集責任者)

東山新社長 ©時事通信社

「あの世界はそういうものなんだという認識で、クロ現で特筆して取り上げようということにはならなかった」(2005年「クローズアップ現代」編集責任者)

 桑子キャスターはこう総括する。

「こうして見ますと、ドラマやエンターテインメント部門では問題に向き合おうとせず、報道では性被害や芸能界で起きる問題への意識の低さがあったと言えます」