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 松井社会部デスクは、判決が確定した後も約20年間、NHKではこの問題を報道してこなかったと認めた。そのことで被害を拡大させたという指摘があり、責任を重く受け止めていると話した。

 今回、番組で話を聞けたのはある一時期の、限られた人たちに過ぎない。海外のメディアにできたことが自分たちにできなかったのはなぜなのか。そこに忖度や圧力はなかったのか。松井デスクは今後もさらに検証する必要があると話した。

NHK内の問題について「第三者委員会の設置も検討すべき」

 番組に出演した「人権とビジネス」の問題にくわしい弁護士の蔵元左近氏は、今回の「クロ現」の調査・報道について「まだまだ突っ込み不足」だと指摘した。

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NHK「クローズアップ現代」9月11日より

 NHK内の組織上の問題について究明する徹底的な事実調査が必要だとし、その手段として「第三者委員会の設置も必要に応じて行われるべき」だと提言した。

「クロ現」の取材からは、「センサーを持ち得ているべきだった」と自分の感度の低さを反省する声が少なくないことがわかる。ただ、蔵元弁護士は個人の「善意」や「感度の高さ」に頼るだけでは、あまりに不安定・不完全だと指摘し、組織としての「体制」や「仕組み」を今後どうやって作っていくかが問われるとする。

 今回の「クロ現」は、過去の放送と比べてみても、「やらせ」「過剰な演出」といった「疑惑の検証」に近いかたちで、自分の局や自分たちの番組で起きた「沈黙」について検証しようとした。もちろんまだ物足りないところはあるにせよ、まず「テレビの責任」を自ら検証しようという姿勢は非常に意欲的だと評価できる。

 これで終わらせることなく、今後はもっと突っ込んだ検証をしてほしい。さらにNHKだけでなく、ほかの民放局からもこうした動きが出てきてほしい。それこそが「マスメディアの沈黙」をなくしていく一歩だろう。