さてこうした事態になると、今後は新築計画の延期や凍結、断念が続くことが予想される。通常であれば、建築費が下がるのを待つということになるのだが、建築費が下がる要素は今のところ見当たらない。なぜなら海外資材中心の原材料価格と国内労働力の低下による人件費の高騰は今後も強まることがあっても弱まる可能性は期待できないからだ。
富裕層をターゲットにする不動産事業で日本社会は二極化へ
それでも何とか商売をしていくためには方策がある。富裕層だけを相手にした不動産事業だ。ホテル建築にしても外資系5スタークラスのホテルであれば宿泊料は1泊10万円以上とれる。顧客から得る宿泊料や多額の飲食料で投資資金の回収可能性は高まる。つまり一定の投資利回りが確保できるのだ。マンションも1戸2億円3億円といった超高級マンションは、国内外の富裕層には大人気でよく売れている。オフィスの場合も、都心超一等地にオフィスを構えるステータスに対して多額の賃料を払うテナントはいる。
賃貸マンションも普及帯では苦戦するも、月額20万円以上もする好立地の高級賃貸マンションの稼働率は高い。
つまり一般庶民をアテにするのではなく、金持ちだけで商売をすればよいのだ。世界的なインフレ傾向が続くかぎり、衰退がはじまった日本でも、一部の金持ち層だけが、何とか世界の潮流に乗り遅れまいとついていくことだろう。
それではついていけない一般庶民が歩む道はなんだろうか。一部の職業は生成AIなどで代替されてしまうだろうが、少ない給料でも仕事がある限り働き続けることなのだ。
これから日本社会の二極化が急速に進むだろう。その世界が建築費の下がらない現場からもクリアに見通せるのである。