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「育てたい。必ず迎えにくる」…「ゆりかご」に預けた子どもを引き取った母親(42)が、虐待死事件を起こしてしまった理由

「育てたい。必ず迎えにくる」…「ゆりかご」に預けた子どもを引き取った母親(42)が、虐待死事件を起こしてしまった理由

2023/10/02
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 Aちゃんは生後6カ月で母親の住む津市の乳児院に移され、児相はその時点で女性の「自分で育てたい」という意思を確認し、家庭復帰に向けた準備を始めている。その過程で女性のケアは行われたのか。三重県子ども福祉・虐待対策課の近正樹課長は「個別案件のため答えられない」としつつ、一般論として児相のとる対応を説明した。

「早い段階でおかあさんの面接を実施します。家族関係やおかあさん自身の生い立ちについても話を聞きます。その後、面会の際のお子さんとの関わりの様子を観察する過程を経て、外泊に進むなどの段階を踏んで家庭復帰をします」

 2009年に児童福祉法に「特定妊婦」が明記された。出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦のことだ。孤立出産し、ゆりかごに預け入れるほどに追い込まれていた女性は、特定妊婦の認定から漏れた人だ。その状況に沿ったカウンセリングや支援はここでも行われなかった。

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母親との定期的な面談を行っていなかった

 1年半後、2歳になったAちゃんは女性のもとで暮らすことになった。その際、児相は(1)育児に女性の両親の助けを借りること、(2)保育園への通園、を条件にし、2021年4月の津市立保育園への入園を機に関わりを終了していた。

 両親は女性のアパートから車で1時間ほどの土地で工場を営んでいる。児相での面会には母親と祖母が連れ立って来所し、児相は祖母と女性の様子も確認したという。だが、女性が妊娠を両親に打ち明けられなかった事実からは、その関係性に何らかの壁があったと見る方が自然だ。両親の支援を家庭復帰の条件とするのは、女性にとって負担だったのではないだろうか。

現場のアパート裏空き地

 Aちゃんが家庭復帰した後の行政の対応はどうか。津市子ども支援課の綾野雅子課長は「個別の案件には答えられない」と回答を避けた一方、母親との定期的な面談は行っておらず、保育園の送り迎え時の母子の様子から安全確認をするにとどまったことを認めた。

※行政の対応に問題はなかったのか、女性について周囲が語っていたことなどを取材した記事全文は『週刊文春WOMAN2023秋号』でお読みいただけます。

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