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田中 そうですね……基本的にほとんどのメーカーさんは炊飯器で炊いたご飯をいかに「かまどで炊いたご飯」に近づけられるかを、それぞれのアプローチで目指しているんですね。高火力のかまどで炊くとお米の芯まで熱が届き、しっかりと甘みを引き出してくれる。そのアプローチの質が、価格によって変わってくるイメージでしょうか。

 例えば、炊飯器の底についているIHヒーターって通常は1つしかないんですけど、象印のハイエンドモデル「炎舞炊き」はあえて小さいIHヒーターを6つ設置することで、かまど特有のムラのある炎の当たり方を再現しているんです。

 ヒーターは1つずつプログラミングされていて、対角線上の2つが同時に加熱して対流を引き起こしお米を美味しくする……という仕組みになっています。価格帯が高いものになると、そういった最新の技術が施されているものが多いですね。

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 あとは内釜も値段によって変わります。先ほども言った通り、以前私が使っていた象印の炊飯器は「南部鉄器」を使用していました。またタイガーの「ご泡火炊き」というハイエンドモデルは土鍋でできた内釜になっています。土鍋は蓄熱性が高く、遠赤効果もあるため、内部までしっかり熱を伝えることができます。

 でも、価格が下のモデルになると「土鍋コーティング」といって土鍋の粉を吹き付けた内釜になって、蓄熱性や熱伝導性が変わってきちゃうんですよね。

 さらに数千円で買えるようなものだと、IHの搭載されていない「マイコン」という機種になります。より簡単な機能しか備わっていないということですね。

――高いものになるほど「かまどで炊いたご飯」に近づけるための工夫がされているということですね。その技術に対して、自分がどこまでお金を出せるかで判断すればいいと。ちなみに、どのメーカーも目指すところは一緒だとしたら、どうやって購入するメーカーを選んだらいいのでしょうか。

購入するメーカーの選び方

田中 味に関してはどのメーカーもとてもおいしいので、どれでも間違いないと思っていますが、選ぶなら食感を比べるのがいいと思います。食感の好みって人によって結構分かれると思うんですよ。三菱電機や日立はやっぱりしゃっきりしてるかな。

――「しゃっきり」というと?

田中 かためで粒立ちが良いということです。口に入れた時に、ご飯粒ひとつひとつを感じるぐらいのしっかりした食感ですね。反対に、水を吸ってもちもちになったお米が好きな人もいますよね。少し前の象印の炊飯器で炊いたお米はすごくもちもちだったんですよ。ご飯粒がすごく大きくて甘みが強くて、それだけで満足しちゃうぐらい食べ応えがありました。

©文藝春秋

 私の場合、昔はもちもちの食感が好きでした。聞けば、日本の西側はもちもち派が多く、東側はしゃっきり派が多いそうで、両親が岡山出身だったのもあるかもしれません。でも長く関東に住んでいるからか好みがちょっとずつ変わってきて、しゃっきりのおいしさがわかってくるようになりました。もちもちだと口に入れた瞬間から甘いんですけど、しゃっきりしたご飯だと噛めば噛むほど甘くなってくるんですよ。

――なるほど、それはかなり大事なポイントですね。とはいえ、実際に味見をしてから購入するのはなかなか難しいと思います。情報としてどういうところを見ればいいのでしょうか。

田中 1つは、メーカーが打ち出すキャッチフレーズや説明書きの傾向を注視する。例えば、日立は「外硬内軟」、つまり外が固めで中が柔らかいという特徴を押し出しています。だったら、しゃっきりした食感なのかな、と見極める。

 傾向としては、関西発メーカーのパナソニック、タイガー、象印はもちもち、関東発メーカーの三菱、日立はしゃっきり系と言われていますね。ただ、今はしゃっきりからもちもちまで、好みの食感を選べる機能がそもそもついている炊飯器も多いんですよ。そういうモデルを選べば、家族の好みがそれぞれ違った場合も安心ですし、おかずに合わせて食感を変えられる楽しみ方もあります。

――本当にどんどん進化しているんですね。では、田中さんがおすすめするハイエンドモデルの炊飯器ベスト3を教えてください。