もう安い炊飯器には戻れない
田中 逆に、一度高級炊飯器で炊いたご飯の美味しさを知ってしまうと、安い炊飯器を買おうとは思えなくなってしまいますね。1つ前に使っていたのも、型落ちで買った象印のハイエンドモデルだったんですけど、すごく美味しく炊けるんです。普通にスーパーで買ったお米なのにこんなに味が変わるんだと思うと、安い炊飯器を使うのは損した気になるというか。
家で炊くお米が美味しくなってから、和食屋さんに行っても「和食屋さんなのに、うちのご飯のほうが美味しいなんて」と残念に思っちゃうくらい、味が気になるようになったんです。
それに、だんだん年を重ねるにつれて、ご飯を食べられる量って減ってくるじゃないですか。若い頃みたいに、おかずが美味しければモリモリ食べれるわけじゃない。だからこそ「この一杯」にかける期待が高まってくるんですよ(笑)。ご飯が1つのメニューとして大事になってくる。
――なるほど、そういう状況の中で、もう安い炊飯器には戻れなくなっちゃったんですね。
田中 そうかもしれないですね。困ったものです。ちなみに前に使ってたものは、本体より先に内釜の中が剥がれてダメになっちゃったんです。内釜は「南部鉄器」っていう本物の鉄を使っている機種だったので、内釜だけ買い換えようと思ったら3万円くらいしたんですよ。だったら新しいものを買った方がいいなと思って。
最近は、上位モデルの炊飯器には5年間の保証をつけてくれるものが増えています。もし途中で同じように内釜がダメになったとしても、保証を使って交換すれば5年以上は使えるな、という安心感もありますね。
――実際、ハイエンドモデルの炊飯器って今、売れてるんでしょうか。
「高くても美味しいご飯が食べたい」ニーズの高さ
田中 台数的に見ると多くはありませんが、コンスタントに売れ続けています。メーカーさんも毎年改良して新しいものを出しているので、需要があると見ていると思っていいのかな、と。
以前は、5万円ぐらい払えば一番いい機種が買えていた記憶がある人も多いと思いますが、10数年前からさらに高価格帯の炊飯器が徐々に増えてきたんです。
最初はメーカー側も「こんな高い炊飯器売れるわけないじゃないか」と思っていたところがあったかもしれませんが、出してみたら想定以上にバカ売れした。「高くてもいいから美味しいご飯が食べたい」っていうニーズが意外と高いことがわかったんですね。それで金額にこだわらず、良いものを作っていこうっていう風潮が、メーカー側でも高まっていったんだと思いますね。
――「美味しいご飯にこだわりたい」と考えている人が、メーカーの予想以上に多かったという事ですね。
田中 そうですね。最近はハイエンドモデルの小容量タイプも結構販売されているんですよ。ターゲットは子どもたちが独立して家を出た後の高齢層です。あとはグルメな共働き夫婦とか。昔は小容量といえば一人暮らし向けの安い価格のものが主流だったんですが、そういうニーズも高まってますね。
一人暮らし始めたての人とかはどうしても、とりあえず必要に迫られて買うので安いものを選ぶことが多いと思いますが、ライフスタイルが変わるたびに少しずつグレードアップしていくと、2人暮らしだからって安いものには戻れない……ということでしょうね。
10万円クラスの炊飯器は「何」が違うのか
――なるほど、すごく気になってきました。それでは具体的に、エントリーモデル(数千円~3万円)やミドルレンジモデル(4~7万円)の炊飯器と比べて、10万円を超えるようなハイエンドモデルの炊飯器というのは、具体的にどこが違うのでしょうか。