〈考察〉が過熱化!?　今年の夏ドラマは豊作――亀和田武「テレビ健康診断」

　まずは阪神vs.巨人。甲子園で阪神がアレを決める瞬間を関東で観ることは出来ないのか。諦めてたら、BS朝日がパ・リーグの試合に甲子園のゲームを割りこませ二元生中継に。

　ありがたい。選手の活躍と岡田采配でアレが決定。岡田監督も「もう、アレじゃなくって優勝って言って」。ここで急遽地上波のテレ朝に。この夜が『ハヤブサ消防団』の最終回だ。

　今年の夏ドラマは豊作だった。『ハヤブサ』も山間（やまあい）ののどかな集落を舞台に、頻発する放火事件と、村に潜入するソーラーパネル会社や謎のカルト教団と消防団の対立をテンポよく描き、見応えたっぷり。

　有名なミステリーの新人賞を獲ったが売れ行きはさっぱり。スランプ状態の新人作家、三馬太郎を中村倫也が好演。のんびり屋さんだが、勘は鋭いし推理力もある。でも、どこか頼りない太郎君は適役だ。

　猛暑に煽られたのか、何本かの夏ドラは〈考察〉が過熱化した。『ハヤブサ』でも、まず放火犯の正体探し。一気に緊張が走ったのは、村を守る「消防団の中に犯人の仲間がいます」という太郎の指摘だ。

　満島真之介はじめ、生瀬勝久、橋本じゅん、岡部たかし、梶原善。みんな、いい奴ばかり。そのなかに、ソーラーパネル事業者と、凶悪事件を起こしたアビゲイル騎士団と通じていた人間がいたなんて。しかもその犯人は、私が（この人だけは違ってて）と願った人だから衝撃はあった。

　かつてアビゲイルに入っていたが、いまは洗脳が解けた立木彩（川口春奈）も太郎と恋愛モードになったのに、ときおり不可解な表情を浮かべるのが、視聴者の不安を煽る。

　さらに人望も厚い随明寺の住職役は、あの異形の舞踏家・麿赤兒だから、あれは何かあると怪しまれる。

　そうした考察過多の視聴者を、最終回で無理なくさらりと納得させる展開はお見事。エンディングでは少しお遊びも入れつつ、教団はまだ存続かと匂わせるところも悪くない。

〈考察〉が止まらないのは『最高の教師』だが、誰が真犯人かばかりを考えていたら、折角の攻めてるドラマの核心を見失ってしまわないか。犯人探しよりも、なぜ松岡茉優と芦田愛菜は二周目の人生を生きねばならなかったかという、肝心の謎とテーマを忘れずに。

　そして低視聴率ながら、コアなファンに支えられた『真夏のシンデレラ』にも一言。チープな展開には目をつぶり、森七菜の健気さのみを観ていた。すると前回のラストでは、傷心の森七菜がクルマにあわや衝突。それを隣にいた幼なじみの神尾楓珠が救おうと……。

　昭和の映画かよ。交通事故に遭った森七菜が記憶喪失になり、もう一度ゼロから間宮祥太朗と出会う。そんなアレでもいいや。