ラグビーW杯フランス大会、日本は1次リーグの第3戦でサモアに勝利。2大会連続の1次リーグ突破をかけて、10月8日にアルゼンチンと対戦する。
前回のW杯では日本国内にラグビーブームが起こり、「ONE TEAM」は2019年の流行語大賞に選ばれた。海外出身選手が半数を占めた日本代表が、どのような思いで戦い、「結束」を強めていったのか。ノンフィクションライターの山川徹氏による『国境を越えたスクラム』(中公文庫)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)
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廣瀬とリーチ、2人の代表キャプテン
2018年年末、東京都府中市にある東芝ブレイブルーパスのクラブハウスでリーチマイケルの共同取材が開かれた。私も数カ月前からインタビュー依頼を行っていたが、メディアからの取材申し込みが殺到し、個別の対応が難しい状況らしい。
当初、10人程度の記者による囲み取材かと考えていたが、予想は大きく裏切られた。広々とした会議室に駆けつけたメディア関係者は、50人以上。記者たちは、彼の言葉をメモし、その表情にカメラを向ける。
前述したように、リーチには2015年W杯の1年前に、約2時間にわたって単独で話を聞いていた。W杯3勝によって生み出されたラグビー熱の高さを感じさせる光景だった。
なんのために、日本代表のジャージを着るのか
リーチは記者たちの質問に流暢な日本語で淡々と答えていく。
私にも質問のチャンスが回ってきた。数日前、発表された日本代表候補38人に、8カ国17人の海外出身選手が選ばれていた。リーチは多様なルーツを持つ選手たちをどのようにまとめていくのだろうか。
「そこは前回のW杯でキャプテンとして戦った経験が大きいです。もちろん外国人選手は特別扱いしません。なんのために、日本代表のジャージを着るのか。そのパッションを重視して引っ張っていけるようにしたいと考えています」
リーチの言葉をメモしながら私は4年前の話を思い出していた。