大腸がんに限らず、「がん」と言われたら、考える余裕もなく最初に診断された病院で手術を受ける人が少なくないのではないだろうか。だが、がん手術は「最初が肝心」と言われる。どうすれば、最初から適切な病院を選び、いい手術を受けられるのか。大腸がんの腹腔鏡手術の第一人者で、中日友好医院(北京)の客員教授なども務める奥田準二医師に話を聞いた。
奥田準二(大阪医科大学附属病院がんセンター特務教授)
1984年大阪医科大学卒業後、同大の一般・消化器外科に入局。米国留学等を経て、2007年に同大学病院准教授。2014年から現職。
――がんの手術は最初に取り切ることが大切だと思うのですが、奥田先生は大腸がんの再手術も多く手がけているそうですね。
私どもはずっと大腸がんを専門に手術してきました。その結果、年々手術数が増えるとともに、他院では手術できない難症例や局所再発した直腸がんの再手術を依頼されることも増えました。
とくに直腸がんは最初の手術でしっかりと取り切って、できるだけ再発させないことが大切です。なぜなら局所再発すると、初発のときより切除が難しく、痛みやしびれで苦しむことが多いからです。
それだけに、最初から妥協せずに、質の高い手術が受けられる病院を選んでいただきたいのですが、診断された病院ですすめられるままに、手術を受ける患者さんが少なくないのが実情です。
――「最初から病院選びを妥協すべきでない」ということは、大腸がん手術も病院で質に差があるのですね。
もちろんです。実際に直腸がんや進行がんでは成績に施設間格差があることを示す研究結果があります。ですから、直腸がんや進行がんと言われたら、慎重に病院選びをしたほうがいいと思います。
直腸がんは、肛門に近いほど手術が難しくなります。直腸は骨盤の深いところにありますし、肛門や自律神経の温存を図りつつ、局所再発させないよう切除するには高度な技術が必要だからです。
また、通常の結腸がんの手術はそれほど難しくありませんが、進行して腫瘍が大きくなったり、横行結腸などにできたりした場合は、やはり手術は難しくなります。
それに、手術の難易度は患者さん側の要因によっても変わります。肥満の患者さんは内臓脂肪が多いので手術がやりにくいですし、心臓や肺に持病のある人は手術のリスクが高くなります。ですから、このような場合も、高度な技術を持った専門施設で手術を受けたほうがいいでしょう。