他のがんと違って乳がんは、専門のクリニック(19床以下の診療所)も多いのが特徴だ。がんセンターや大学病院とは違って、同じ病気の人たちが支え合うアットホームな雰囲気を気に入ってクリニックを選ぶ患者も多い。一方で、がん拠点病院で専門的な治療を受けたほうがいいケースもあるという。どのような考え方で乳がんの治療施設を選べばいいか、北海道がんセンターの髙橋医師にアドバイスをもらった。

髙橋將人(北海道がんセンター副院長)
旭川医科大学卒業後、北海道大学病院、千葉県がんセンター研究局を経て、2010年から北海道がんセンターに勤務。

――巷(ちまた)には乳腺科や乳腺外科を標榜するクリニックがたくさんあります。そのような小さな施設でも、乳がんは安心して治療できるでしょうか。

 まず、乳腺専門クリニックといっても、2種類あることを知っておく必要があると思います。

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 一つは主に乳がんの検診・検査と診断までを行っているところです。そのような施設は基本的に乳がんの治療はしませんので、連携している医療機関に患者さんを紹介してくれるはずです。もし、きちんとした治療ができないところを紹介したら、自分のクリニックの評判にも関わりますから、信頼できる病院を紹介してくれることが多いでしょう。

 もう一つは、検診・検査、診断だけでなく、手術や薬物療法も行う自己完結型のクリニックです。放射線治療や乳房再建手術は別の病院と連携して行っているところが多いですが、クリニックであってもほとんどの患者さんは、きちんとした治療をしてもらえると思います。その日のうちに検査して、結果を出してもらえるなど、大病院とは違って、小回りが利くのがクリニックのよさです。

 ただ、中には治療の難しい患者さんがおられます。そのような場合は、国の基準を満たした「がん拠点病院(がん診療連携拠点病院)」のような、より専門的な治療ができる医療機関での治療も考えていただければと思います。