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周りのフォローも大切

――治療の難しい患者さんとは、具体的にはどのような人でしょう。

 乳がんは、増殖能が高いか低いか、ホルモン受容体が陰性か陽性か、HER2(がん細胞に多く発現するタンパク)が陽性か陰性かによって、5つのサブタイプに分けられています。このうち、「トリプルネガティブ」と呼ばれる、ホルモン受容体もHER2も陰性の方は、治療が難しく、化学療法(抗がん剤治療)が必要になります。また、HER2陽性の方も、ハーセプチン(HER2陽性の患者に使える分子標的薬)に加えて、化学療法が必要になります。

 標準的な化学療法は、決められた量とスケジュールをしっかり守って行うことが重要です。がん拠点病院で、乳がん診療の実績が豊富な施設なら、標準的な化学療法を受けられるでしょう。

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 また、トリプルネガティブの人は、遺伝性の乳がんである可能性もあります。その場合、患者さん本人だけでなく、ご家族や近親者のフォローも大切になります。こうした体制は、専門性の高い病院でないと中々取れません。ですから、化学療法が必要なタイプにあてはまる場合は、乳がん診療の実績が豊富ながん拠点病院などに相談してみるといいと思います。また、それ以前のこととして、自分がどのサブタイプに当てはまるか教えてくれない施設では、治療を受けないほうがいいと思います。

――クリニックには大病院にない良さがありますよね。私も乳がん専門クリニックを取材した際に、食堂に患者さんが集まって楽しそうにおしゃべりをしていて、「合宿みたいで、退院したくない」と話す光景を見たことがあります。

 そうですね。乳腺専門のクリニックには、乳がんの患者さんしかおられません。ですので、みなさんがお互いに病気や治療のつらさを理解することができ、励まし合ったり支え合ったりできます。また、クリニックのスタッフも乳がんの患者さんと常日頃から触れ合っているので、アットホームな雰囲気づくりができるでしょう。

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 逆に、がん拠点病院のような大きな病院だと乳がん以外のがん患者さんもいますし、大学病院や総合病院の場合はがん以外の患者さんもおられます。我々も患者さんに温かく接する雰囲気作りに努めていますが、クリニックと同じようにはいかないところもあります。

 ですから、あまり治療が難しくないタイプの乳がんの患者さんは、クリニックを治療施設の選択肢に入れていいと思います。ただしその場合も「ただ雰囲気がいいから」という理由だけで決めてしまわないで、きちんとした治療ができる施設かどうかを見極めてください。

 また、治療が難しい場合や他の治療が必要になった場合に、より専門性の高い治療ができる病院と連携しているかも、クリニックを選ぶ際には重要なポイントだと思います。もしクリニックでの診断や治療に心配や疑問があった場合は、遠慮なく専門性の高い病院等でセカンドオピニオンを求めてください。