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――乳がん治療の専門性が高い施設だと、薬の臨床試験への参加を求められることもありますよね。

 はい。国に新薬の承認を求めるための臨床試験を「治験」と呼びますが、この場合、患者さんを新しい薬を使うグループと従来薬を使うグループとに無作為に分けて、効果を比較する方法(ランダム化比較試験)がとられます。

 患者さんも医師も、どちらに新薬があたるかわからない状態(二重盲検法)で行いますが、現在の臨床試験には高い倫理性が求められるので、どちらのグループに入ったとしても、患者さんには不利益がないように配慮しながら試験が進められます。

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 つまり、きちんとした標準治療が行える体制がないと、その施設では治験をはじめとする臨床試験は実施できないのです。実は、クリニックの中にも、多施設共同で行われる臨床試験に参加している施設があります。ですから、臨床試験を実施しているかどうかも、治療施設を選ぶ一つの目安になるかもしれません。どこで臨床試験を実施しているか、医療側も積極的に情報公開していくことが必要でしょう。

 なお、臨床試験の被験者には厳密な条件が決められていますので、「新薬を使いたい」と患者さんが参加を希望されても、お断りする場合があります。また逆に、日本では条件に合っていても、「実験台になるのはイヤだ」と言って、参加を拒否される患者さんが少なくありません。

 前述した通り、臨床試験に参加しても、患者さんには不利益にならないような配慮がされていますし、未来の患者さんに有益な治療を提供するために行っています。ですから、患者さん方にもぜひ臨床試験の意義を理解していただきたいと思っています。

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テレビ報道を鵜のみにするな

――最後に、乳がんが気になる方や、乳がん患者さんへのアドバイスをお聞かせください。

 実は最近、とても懸念していることがあります。有名人の方々が乳がんになって、テレビやネットなどで様々な報道がされるのはいいのですが、医学的に間違った内容が多いのです。困ったことに、テレビ等に呼ばれてコメントされる医師の中にも、間違ったことを言う方がおられます。

 ですから、マスコミの間違った情報に振り回されず、ぜひ医学的に正しい情報を得るようにしてほしいのです。たとえば、日本乳癌学会のホームページに『科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 2015年版』が公開されています。これを読めば、現時点で最も標準的な乳がんの診断や治療を知ることができます。

 また、ガイドラインの内容をよりわかりやすく解説した「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」のページも開設されています。ので、ぜひこれらの情報源を活用してください。それでももしわからないことがあれば、日本乳癌学会が認定する乳腺専門医に相談してください。

 最適な治療を受けるためにも、正しい情報を得ることが不可欠です。そのためにも、患者さん方には賢くなっていただきたいと思います。