一瞬だけの優しさに甘えないようにしていた
――ヤングケアラーだった当時、「こういうことがあれば助かったな」「こうしてほしかったな」と思うことはありましたか。
風間 「こうしてほしい、ああしてほしい」って一時的なものだと思うので、一瞬良くなってもダメなんですよね。それがずっと続かないと。だから子どもの時に優しくしてくれる大人はいたんですけど、「これは一時的なものだから、それに甘えてしまうと自分の心が揺らいでしまう」と思って、手を差し伸べようとしてくれるのをお断りしていたんです。
永久に手を差し伸べてくれるならいいけど、今の一瞬だけ優しくされても、逆に甘えちゃうじゃないですか。その優しさは一瞬だから、すぐになくなってしまうわけで。そうなると、甘えちゃった自分の気持ちを元に戻すのが結構大変だから。
子どもの時、知らない人から「お年玉をあげるよ」と言われたことがあるんですけど、俺には「かわいそうだからあげるよ」という風に見えたんです。だから「いいです、結構です」と断ったら、「可愛くない」と頭をごつんと殴られてしまいました(笑)。
子どもの小さなSOSを近くにいる大人が見てあげることが大事
――今、ヤングケアラー問題や家族関係に悩んでいる人も多い社会において、風間さんはこうした問題についてどういったことが必要だと考えられますか。
風間 子どもが何か環境を変えようと思っても、自分から家を出て行くこともできないし、そういう子達にとっては大人になるまで待つしか手段がないと思うんです。俺も子どもの時、「自分で稼げるようになるまで耐えるしかない」と思っていたので。
そういう子どもたちって、誰かに相談するってことはないんですけど、必ず何かしらのSOSを出しているとは思うんです。それは人に対して出しているというより、醸し出しているというか。子どもが自分から誰かに対して発信することは、多分あまり多くないと思うんですね、きっと「恥ずかしい」という気持ちもあるだろうし。
だから、その小さなSOSを近くにいる大人が見てあげることがすごく大事なんじゃないかな。でも、いきなり「どうしたの」と声をかけても絶対喋らないと思うんですよ。必要なのは回を重ねるというか、信頼を重ねるという意味で、近所の人が挨拶だけでもいいし、毎日声をかけるようにする。そうするとだんだん話す機会ができて、子どもが出したサインを見逃さずにケアできるようになると思っていて。
だからこそ、子どもが話をできるようなコミュニケーションづくりを日頃から行っていく、というのは、こうした問題の解決のためには必要なことだと思っています。
撮影=細田忠/文藝春秋
INFORMATION
風間トオルさんが、10月7日(土)より、舞台「最高のオバハン中島ハルコ」高松・大阪・長野・岩手・山形公演に出演。詳細はこちら⇒https://www.tohostage.com/haruko/