ジャニーズ事務所は今月2日に記者会見を開きました。席上、東山紀之新社長は、「SMILE-UP.(スマイルアップ)」と社名変更し、被害者の補償を行った上で補償が終わったら廃業すること、所属タレントのマネジメント業務を新たに設立する会社(社名は未定)が担うことを発表しました。
今回の社名変更・組織再編という方策は、吉と出るのでしょうか、凶と出るのでしょうか。方策の狙いを確認した上で、今後の展開を経営コンサルタントの視点で占ってみましょう。
契約を復活するには「社名変更」は必須
会社側がジャニー喜多川前社長の犯罪を初めて認めた9月7日の記者会見で、東山紀之社長は次のように述べ、「ジャニーズ事務所」の社名を使い続けるという判断を示しました。
「名称に関してたいへん議論した。どうするべきか、これだけの犯罪なので、これを引き続き守るべきか。ただジャニーズというのは創業者の名前であり初代でもあり、大事なのはこれまでタレントが培ってきたプライドなど、その表現の1つと思っている」
この説明に加えて、おそらく経営陣には、(1)ジャニー喜多川前社長の個人的な犯罪であり、社名を変更する必要はない、(2)社名変更すると事業運営に大きな打撃になる、という考えがあったのでしょう。
このうち(2)は、ジャニーズWEST、関ジャニ∞など「ジャニーズ」の名を冠したグループが多数あり、社名変更を行うとグループ名の変更も必要になり、知名度・人気が低下するのではないか、ということです。
ところが、記者会見の直後から、ジャニーズ所属タレントをCMなどで起用していた大手企業が、相次いで契約打ち切りを表明しました。この動きを受けてジャニーズ事務所は、一転して社名変更・組織再編に踏み切りました。
大手企業が契約を打ち切ったのは、株主、東京証券取引所に上場する企業の株式の30.1%(2023年3月末)を保有する外国人株主を意識した判断です。外国人株主、とくに欧米の機関投資家は、「人権問題」を非常に重視しています。