買収したツイッターの社名を、Xに変更したイーロン・マスク。なぜX? と世界中がざわつき、衝撃が走ったのも記憶に新しい。だが、よく見るとマスクのまわりはXにあふれている。宇宙開発の会社(スペースX)、最愛の息子の愛称(X)……。

 発売されるなり20万部突破のベストセラーとなった『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著 井口耕二訳)から、マスクのXへのこだわりの秘密を解き明かすエピソードを紹介する。

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 イーロン・マスクが一番初めに起業した会社は「Zip2」という名前だった。ITブームに沸く1995年のことである。マーケティング会社と弟が考えたこの社名が、マスクは嫌いだった。

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 とはいえ、事業者の電話帳(事業者名簿)と地図ソフトウェアをウェブ上で組み合わせたサービスを展開したZip2は、最終的に成功を収めた。

マスクが「人の下で働くのは好きでも上手でもない」と身に染みた経験

 そのZip2 を売却して得た大金をもとに、1999年に立ち上げたのがXドットコムである。マスクは壮大なビジョンを掲げていた。

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 銀行業務、デジタル決済、小切手の決済、クレジットカード、投資、融資と金融系のニーズをすべて満たす、ワンストップのエブリシング・ストアにしよう、というものだ。

 じつはマスクは大学時代に銀行でアルバイトをしていたことがある。その際、銀行の非合理さやダメさを痛感したこと、また人の下で働くのは好きでも上手でもないと身に染みたことも、起業しようとした理由のひとつだった。