ちなみにバルーンは見た目以上に丈夫で、水を満タンにして足で踏んづけても破裂したり穴が開くことはない。食べたものはバルーンと胃壁の隙間を通って消化・排泄される。
Allurionの特徴として、患者には専用の体重計が渡される(返却不要)という点がある。この体重計には体重の他、BMI、筋肉量、骨量、水分量、基礎代謝、内臓脂肪レベルなどが表示されるだけでなく、専用のトラッカーを使えば歩数や運動量、睡眠時間などのデータも確認できる。
そこに集積されたデータは患者だけでなく医療機関でも共有することができる。スマートフォンに専用のアプリをダウンロードすれば、術後は医療機関を受診しなくても、このデジタルツールによって患者と医師が情報を共有し、フォローアップできる仕組みだ。
「バルーンを入れてから約1週間は“違和感”が残りますが…」
「Spatz3もAllurionも、バルーンを入れてから約1週間は“違和感”が残りますが、吐き気止めの薬でコントロールできます。飲食に特に制限はないものの、最初の3日間は水分補給程度で、その後1週間程度はピューレのようなものから食べるようにしていく感じ。
運動はダイビングとスカイダイビング、あとはコンタクトスポーツはNGとされていますが、それ以外の競技はOK。16週間後にバルーンの水が排出されるときも、特に不快な症状を感じることはなく、気付かない人もいます」
最初の1週間さえ乗り切ってしまえば、あとは食事量は少なくなるが普通の生活を送れる、ということなのだ。
それでいて減量効果は大きく、16週間のバルーン留置で平均10~15%の体重減少が見られる――というメーカー側からの報告も出ている。
「単にバルーンを入れていたことで物理的に食が細くなっていただけでなく、その間に改善した生活習慣と食習慣に体が慣れたことで、体や考え方が“太らない生活”に向かうようになる。これが、高い治療成績の背景にあるものと思われます」
そう分析する笠間医師が過去に治療した症例で、著しい効果が見られた例を挙げてもらった。