「バルーン治療」に潜むリスク

 外科手術では、100.5kgだった人が手術によって1年3カ月後には45.7kgまで体重が減少。一方、従来型のバルーン留置術では、やはり100.5kgだった人が10カ月後に72.5kgまで減量が実現しているという。

 Allurionを用いた減量治療は自由診療なので60万円+税の全額が自己負担。入院の必要はなく、外来通院で対応できる。日本ではまだ始まったばかりのAllurionだが、海外ではすでに10万人に治療実績があるという。

 減量手術もバルーン留置術も、「美容」だけを目的としての治療はできない。あくまで「疾患」に対する治療として行われる性格のものなのだ。

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 しかし、今後こうした新しい技術に目を付けた美容外科が、治療法の一つの柱としてバルーン留置術などの減量治療を導入することは容易に想像がつく。

 ただ、Allurionにもわずかではあるが合併症のリスクはある。その中には消化管に穴が開く「穿孔」や膵炎など、生命に直結する有害事象も含まれる。また状況に応じて、胃カメラを用いたバルーンの摘出が必要となることもある。万一そうした事態が起きたとき、美容外科でどこまで対応できるのかとなると甚だ疑問だ。

 

 また現状でバルーン留置術を実施している医療機関では、「BMI27以上」「合併症がある」の他に「20歳~65歳の年齢制限」「過去に胃の手術を受けている人は対象外」「美容だけを目的とした治療は対象外」などの自主規制をかけて安全性を担保しているが、もし美容外科がこれを導入した時に、そうした歯止めがかかるかどうかは疑問だ。少なくとも「美容」を目的とした美容外科に「美容だけを目的とした治療はNG」という文言が通用するとも思えない。

減量治療をする「目的」に立ち返ること

 他にも懸念すべき点はある、と笠間医師が付け加える。

「バルーン留置術は、いくつかある肥満症治療の一つのオプションです。本来手術が必要な人に他の選択肢を与えずにバルーン留置術のみを勧めて、それによってより効果の高い手術を受ける機会を逸してしまったら取り返しのつかないことにもなりかねない」

 

 疾患治療を目的とした減量治療が今後も健全な成長を続けるには、医療消費者が正しい知識をもって利用するしか手がないのが実情なのだ。

「減量治療とは、様々な疾患の源流である“肥満”を改善することで、下流にある重大疾患を未然に防ぐことが目的。そのための包括的な治療として手術やバルーン留置術があるわけで、その理念を絶対に逸脱することがあってはならない」

 繰り返すが、肥満症は病気だ。病院選びは十分に吟味し、慎重に検討したうえで受診して下さい。