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「肥満症の人は、しばらくの間は食べなくても体内に脂肪が蓄積されているので、栄養不足になる危険性はありません。バルーンに慣れるまでの1週間程度は、脱水にならないように水さえきちんと飲んでいれば、健康に影響することなく減量できる治療法です」

「Spatz3」と呼ばれる従来型のバルーン留置術は、胃カメラを使って空のバルーンを胃の中に留置し、バルーンにつながっている管を通じて水(生理食塩水)を注入。水が入ってバルーンが膨らむと管は抜き取って、バルーンだけが胃に残る。

 そして1年後、再び口から内視鏡を入れて操作し、バルーンの中の水を排出して、空になったバルーンは口から取り出す。内視鏡を使えば留置中のバルーンへの追加操作も可能で、初めは500㏄の水の注入でスタートし、途中から最大量の700㏄まで増やす、といったこともできる。減量効果は手術ほどではないものの、減量治療のとっかかりとして、手軽にできる治療といえる。

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水を入れるとバルーンは胃の中でパンパンに膨らみ…

 そんなバルーンを留置する減量治療法の最新版が今年、日本で初めて笠間医師の診療科で臨床導入された。「Allurion」と呼ばれるこのバルーンは、内視鏡を使わない。

減量治療法の最新版の「Allurion」と呼ばれるバルーン

 患者はまず、紐の付いた長さ2センチほどのカプセルを飲み込む。カプセルが胃に到達したことをエックス線画像で確認すると、その紐(細い管)を通じて生理食塩水を慎重に注入する。容量一杯の550㏄を充填すると、紐(管)を外して口から取り出す。これでバルーンの留置は完了だ。

「550㏄の水を入れるとポリウレタン製のバルーンはパンパンに膨らみ、これを胃に入れた状態で過ごしてもらいます。約16週間が過ぎるとバルーンのバルブが自然に開き、中の水は排出されます。

 従来のバルーンと異なるのは、使い終えたバルーンを胃カメラで取り出す必要がない、という点。そのままにしておけば、いずれ便として排出され、水洗トイレで流しても問題ありません。患者はバルーンの留置時や排出時に、口から内視鏡を出し入れする“苦痛”を経験しなくて済むのです」

(イメージ図)

バルーンは胃の中で破裂しないの…?

 550ccの水が入ったバルーンは、容量としては「大きめのリンゴ1個分」とのことだが、形状は「アンパン1個分」に相当する。胃の中につねにアンパンが一つ入っていると考えれば、「それほど食欲も出ないだろうな」という想像はつく。