ITエンジニアからエロ同人ゲームクリエイターに転職した社員も
インタビューには、A氏のサークルに転職したB氏(仮名)も同席していた。B氏は元・IT企業のエンジニアで、手堅い職業から大きな転身を行った人物である。不安はなかったのだろうか?
「エンジニアとしての仕事は、お金のためと割り切っていました。転職は社会的地位が低下するデメリットはあるものの、好きなゲームを作って生きる理想を叶えられるなと考えました。」
B氏は、数年前から趣味で自分のエロ同人ゲームを制作している。その過程でA氏と出会い、24時間ずっとエロ同人ゲームに関わるために転職を決意したという。
「なので、働いている時間が趣味みたいなんですよね。会議も楽しいです。」
そして、B氏にはエロ同人ゲーム制作をゲームプログラミングとして楽しんでいる側面もある。これは一般向けゲームでも同様で、いまやゲーム制作が趣味のひとつといえるような状況なのだ。
B氏は思春期のころに『クロノ・トリガー』や『ファイナルファンタジーVI』といった有名RPGを体験し、それを再現しつつ作品に活かす方法を模索するのが楽しいという。そのうえで、アダルトコンテンツを作ることが重要だと語る。
「(エロ同人ゲームを作る理由は)エロと注目度です。自分の性癖を曝け出せるうえ、とにかく需要が高いので制作物が多くの人の目に留まります。せっかく作った物が誰にもプレイしてもらえないのは悲しいですしね。」
B氏は年間100本以上のエロ同人ゲームに触れるマニアックな人物であり、だからこそこだわりを作品に活かすことができる。B氏のようにエロ同人ゲームならではの世界に魅せられた人たちがいるゆえに、この業界は広がりを見せているのだろう。
文化としての「エロ同人ゲーム」
冒頭に書いたように、エロ同人ゲームの世界はまだ一部の人にしか知られていない業界である。それこそ一般向けインディーゲームのマニアであったとしても、この世界は知らないと言う人すらいるのだ。
エロ同人ゲームの世界もひとつの文化であることは間違いないし、これから産業としてより大きくなっていく可能性もあるだろう。ゲームメディアでは取り上げられないゲームの世界も存在するのだ。
人間と性欲には切っても切れない縁がある。それがひとつの文化・産業として成り立つのはなんら不思議ではない。そして、そのための作品を作る人たちがいるのも、ごく当たり前のことであろう。