文春オンライン

「『ストレスがないこと』だけをルールに、小豆島でヤギと暮らす毎日です」――内澤旬子、乳がんを語る #2

内澤旬子さんインタビュー

2018/04/10
note

「ストレスがないこと」だけを生きるルールに決めた

──しかも、担当医とのコミュニケーションがうまく取れず、再建した左右の乳房が上下に少しずれたそうですね。

内澤 「もとの胸より大きくなったんだからいいだろう」と言われた時は、マジギレしました。男性が関わるのはそれだけ難しい問題なのでしょうね。心の底から女性の形成外科医が増えてくれることを願います。

 

──特に婦人科系のがんの場合は、女性にしかわからない思いもあります。

ADVERTISEMENT

内澤 でも、既婚か未婚か、子どもがいるのかいないのか、などそれぞれの状況によってもまた大きく違うので、結局正解はないんですよね。

 私は、子どもを生むつもりもなかったし、「不幸」がベースにあったので、「ストレスがないこと」だけをルールに決めて好き勝手に生きてきましたけど、大事な家族がいて持ち家に暮らしていて……みたいに「幸せ」がベースにある人は、それをひとつでも取りこぼさないことに縛られてしまうので、かえって苦しいのかな……とも思います。

頼れるのは「同じ経験を持つ女友達」

──同じ病気を経験した、同じ境遇の同性の友達でなければわからない部分があると。

内澤 そもそもがん患者って、病気のことを誰にも言えずに自分のなかに抱えている人も結構多いんです。私は、自分のストレスをなくすために、がんであることを早い段階でブログに公開しましたが、「誰にも言ってなかったけど実は私も」と相談を受けることが増えました。

 

──がんに罹患して、治療の情報などを自分で調べる方もいます。

内澤 それは、よほど気丈な人ですよ。私はがんに罹患する前からもともと虚弱だったこともあって、調査放棄しすぎたかもと反省していますが、「がん」と聞いてパニックになって自分で細かく調べる意欲がわかなくなる人はたくさんいると思います。

 母親もそして夫も、たとえ新婚であったとしても、患者の支えになれる例はとても少ないと聞いたことがあります。私自身もまったくその通りだったので、頼れるのは結局、「同じ経験を持つ女友達」なのかなと思います。