転職に成功する人、失敗する人、その分かれ目はどこにあるのか。ロート製薬の最高人事責任者を経て、現在はさまざまな企業の社外取締役を務める高倉千春氏は、本人の心構え、自身のキャリアとの向き合い方にかかっていると指摘する。

 ここでは、同氏の著書『人事変革ストーリー 個と組織「共進化」の時代』(光文社新書)の一部を抜粋。長年、最先端の現場で人事に携わってきた高倉氏の知見を紹介する。同氏が明かした転職における“最も不幸なパターン”とは。

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転職の成否は本人次第

 近年、日本のビジネスパーソンの間で、「転職」は身近な選択肢になりました。転職者の数は徐々にではあるものの増えていて、企業各社はキャリア採用に積極的に取り組んでいます。巷にも転職エージェントの広告があふれており、若いZ世代の中には、新卒で大企業に入社した後も常に転職を念頭に置きながら働く人が少なくないと聞きます。

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 ロート製薬でも2022年に20人ほどのキャリア採用者を迎え入れました。会社ではその人たちを対象に特別研修を実施することになり、複数回転職を経験した私が講師を務めました。以下にその内容を紹介します。

ハッピーな転職が実現させるために気を付けること

 ビジネスパーソンが転職を決断する動機はさまざまです。チャレンジの機会が欲しい。もっと成長したい。より広い職責で活躍したい。より高い報酬を得たい。将来性のある会社で働きたい。魅力的な職場で働きたい。家族のサポートが得られやすい仕事に就きたい。他にもいろいろ挙げられるでしょう。

 しかし、そうした十人十色の動機によって選択される転職が、期待通りの結果をもたらすかどうかは本人次第の面があります。受け入れる会社側の努力やサポートも非常に大切ですが、ハッピーな転職が実現するかどうかは、転職者の心構えや自身のキャリアとの向き合い方にかかっています。

 その理由を以下に述べます。

(1)新たな職場の人たちは転職者の過去を知らない

 まず転職者は往々にして、「新たな職場の人たちは自分のことをよく知っているに違いない」と思いがちです。特にベテランの人たちはそういう傾向にあります。