「評価」より「評判」を高める
(3)転職者は「新たな要素」を期待されている
転職の成否が本人次第なのは、転職者が「従来は社内になかった新たな要素」としての役割を果たすことを期待されているからでもあります。その役割を理解し、十分に果たすためには、一刻も早く新たな仲間たちと「同じ船」に乗る覚悟を決め、ともによりよい方向に前進していけるように努力しなくてはなりません。その中で、将来に向けて変化すべきことがあると思ったら、思い切って提案することが大事です。
また、そうした努力を実らせるためには、「評価」より「評判」を高めるように心がけることも大事です。評価は業績を数値化しただけのものですが、評判は「あの人はほかの人にできない仕事をしている」とか、「あの人は人間的に信頼できる」とか「あの人はしっかりした価値観を持って働いている」といった声となって社内外に広がっていきます。定年後のセカンドキャリアを考える際にカギとなるのも、評価より評判です。
葛藤をどう乗り越えるか
本書では、複業や兼業を越境学習の観点から分析してきましたが、転職もまた越境学習の機会です。ただ、複業・兼業はホームとアウェイの往還によって得られる学びですが、転職はホームからアウェイに越境した後、アウェイを新たなホームに変えなくてはなりません。当然、そのプロセスにおいては、過去のやり方や考え方が通用しないとか、新たな職場のやり方や考え方に慣れないといった葛藤を抱くことになりますが、葛藤が大きいからこそ、得られる学びも多いと言えます。
では、そういう葛藤はどうすれば乗り越えられるのでしょうか。
私自身の経験に照らして言えば、転職は「自分は何者か(Who am I ?)」を深く掘り下げるところから始まります。自分は何をしたいのか、何を求めて仕事に向き合っているのかを改めてよく考え、個人パーパスを自覚し直して新たな仕事に臨む必要があります。
また、新たな職場で活躍するためには、チャレンジする意欲を最大限に高め、自分が仕事を通じて社会に提供できる価値を見極めなくてはなりません。
管理職や経営幹部といったポジションで転職する場合には、プロフェッショナルとしてビジネス全体を俯瞰し、顧客志向・経営者視点で業務を遂行することも求められます。