自社が進んでいく方向性をどのくらい「理解」しているか、それに対してどのくらい「共感」をおぼえているか、自分自身はどのくらい主体的に「行動」しようとしているか……。これらをスコア化した調査で、日本は調査国139カ国中132位という低順位を記録した。いったいなぜ日本のビジネスパーソンは愛社精神を抱かない傾向にあるのか。
ロート製薬の最高人事責任者を経て、現在はさまざまな企業の社外取締役を務める高倉千春氏の著書『人事変革ストーリー 個と組織「共進化」の時代』(光文社新書)の一部を抜粋し、紹介する。
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日本人のエンゲージメントはなぜ低い?
個々の社員に企業活動の主役になってもらうためには、ココロに目配りをしなくてはなりません。多様な個の活躍が期待される時代においてはなおさらそうです。
学習院大学の守島基博教授は、人的資本ではなく、「人的資源」という用語を用いつつ、近著で次のように指摘しておられます。
「人的資源とは厄介な資源である。モノ、カネ、情報、時間などの他の経営資源と違い、ココロをもっている。そして人は、ココロの状態によって、資源としての価値が違ってくる」「人はココロのありようによって、人材としての価値が高低する」(『全員戦力化』日本経済新聞出版、2021年)
つまり、企業は、社員それぞれのココロに火がついた状態になっているかどうかを常に把握しておく必要があるわけで、そのために欧米企業では「従業員エンゲージメント調査」を導入していったのです。日本でもエンゲージメント調査を実施する企業が増えていますが、外資系の日本法人ではすでに20年前から定期的に実施していました。
日本人の自社愛は139カ国中132位
エンゲージメントとは、「自社に愛着を感じ、自発的に仕事に取り組む意欲を持っている状態」を指しており、以前の調査項目は「理解度(Think)」「共感度(Feel)」「行動意欲(Act)」の3要素から構成されていました。自社が進んでいく方向性をどのくらい「理解」しているか、それに対してどのくらい「共感」をおぼえているか、自分自身はどのくらい主体的に「行動」しようとしているか、これら3要素のスコアが高ければ、その従業員のココロは火がついている状態だと判断されてきました。