ひと言で言えば、転職とは「自分ブランド」を再構築するプロセスであり、それが実現したとき、葛藤は学びに変わり、アウェイはホームに変わっているはずです。
他人と自分の差別化にもどかしい思いを抱えている人は案外多い
少し脱線するのをお許しください。
2022年のサッカー・ワールドカップは大いに盛り上がりました。私もにわかファンの一人として日本代表の試合をテレビで観戦し、選手たちに声援を送りました。
特に印象に残ったのは、グループリーグ突破を決めたスペイン戦で、堂安律選手がペナルティエリア右手前からミドルシュートを放ち、同点ゴールを決めたシーンでした。
試合終了後のインタビューで、堂安選手は「あそこは俺のコースなので。あそこで持てば絶対打ってやるって決めてたので。思い切って打ちました」と自身のプレーを振り返りました。
その日のNHKのダイジェスト番組では、試合結果を受けて東京・新橋の飲み屋街で街頭インタビューを行っており、堂安選手の発言に注目して「自分もああいうことを言ってみたい」などとうらやましがる男性ビジネスパーソンたちの声を伝えていました。
私はNHKの取材力に感心するとともに、堂安選手が言う「俺のコース」に当たるものを世のビジネスパーソンも欲しがっているのだと知って感慨をおぼえました。自分が得意としていて、やれば成果を出せる自信があり、それが自分の差別化につながっている、そんなタスクなり領域なりがわかっていればもっと活躍できるのに、なかなか見つけられない。そんなもどかしい思いを抱えている人たちは案外多いのかもしれません。
自分なりに努力を積み上げていけば、「自分のコース」を見つけられるはず
ただ、堂安選手は何の努力も苦労もせずに「俺のコース」を見つけたわけではないようです。後日、民放のニュース番組に出演したとき、堂安選手はこんなふうに語っています。
「このコースは世界で一番練習しているし、ボールを見なくても打てるくらいこのコースは練習しているので、まさに堂安律のコースだと思っている」
もちろん生まれながらの才能もあるのでしょうが、堂安選手も苦労や努力を重ね、国内のチームからヨーロッパのチームに移籍するといった越境も経験していく中で、自分が最も得意とするコースを確立したのです。
だとしたら、世のビジネスパーソンも堂安選手をうらやましがるだけでなく、自分なりに努力を積み上げていくべきなのかもしれません。そうすれば、いつか「自分のコース」を見つけられるはずです。そのために私たちは長期間働いていると言ってもいいでしょう。