10月13日、政府は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の解散命令を東京地方裁判所に請求した。
今回の解散命令請求の決め手となったのは、教団側の信者に対する"献金集め"の実態だ。「週刊文春」は、教団内で共有されていた献金に関する極秘資料を入手していた。当時の記事を再公開する(初出:週刊文春2022年8月18日・25日号/年齢・肩書きは当時のまま)。
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若者が、学校や会社を突然辞めて家族と連絡を絶ってしまう「親泣かせの原理運動」が話題になったのは、1960年代から70年代。壺や印鑑を高額で売りつける霊感商法が社会問題化したのは、80年代。有名人の参加で合同結婚式が騒がれたのは、90年代。
しかし今世紀に入ってから、統一教会(世界平和統一家庭連合)に関する報道が下火になったのは事実。自民党幹部の口から「何が問題かわからない」という言葉まで飛び出す始末だ。
筆者は1992年に『週刊文春』の特派記者となって以来、統一教会の問題を断続的に報じてきたが、この数年は記事を書いていない。その自省も込めて、統一教会がこの間に行なってきた反社会的行為の一端を、内部資料を基に振り返っておく。
2007年から10年にかけて、統一教会が全国で展開していた霊感商法の会社が相次いで摘発された。容疑は、客を不安に陥れて印鑑などを高額で売りつけた特定商取引法違反。このとき、表紙から中身までまったく同じ「印鑑販売マニュアル」や「トークマニュアル」が各地で押収され、筆者は一部を入手した。
手相や姓名鑑定を入口に、相手やその家族が抱える悩みを聞き出し、原因に先祖の因縁があると説く。そして今こそ転換期だと吹き込んで、開運のために守護印が必要だと信じさせるクロージングへ持って行く。姓名鑑定トークの一部を引用しよう。
〈(3)長男・長女判断
「長男(長女)でしょう!」
当たれば…「今日初めての出会いですが、この画数の数意によって長男(長女)ということが分かります。不思議でしょう」
はずれたら…「そうですか…しかし2男、3男に生まれていても将来、親の面倒を必ず見ていかなければならない宿命にあります」
(4)病気判断
「私は医者ではありませんが…〇〇が悪い(弱い)でしょう」
※当たれば大袈裟に強調する!
注)病気が当った場合は特に大事にすること。これだけで印鑑を作ることが多い〉
人の弱みにつけ込む霊感商法の悪質さが、端的に表れている。さらに、客が購入を迷ったときの説得や断わったときの切り返しなど、トップセールスマン顔負けの話術が教示される。