霊感商法による被害合計は約1237億円に上る
霊感商法による被害は、全国霊感商法対策弁護士連絡会が集計しただけでも、1987年から2021年までに相談件数約3万4000件、被害合計は約1237億円に上る。物品の売上や信者からの献金は、大半が韓国へ送られ、豪華な施設の建設や関連企業の経営資金、教祖夫妻のぜいたくのために使われてきた。
筆者は2011年9月8日号の『週刊文春』で、1999年からの9年間で約4900億円が韓国へ送金されていたことを報じた。最も多い月は2000年4月で、約194億円。年平均にすると、約570億円が送られていた。
警察による一連の摘発を受け、統一教会は2009年2月にいわゆる「コンプライアンス宣言」を行なった。霊感商法を大っぴらにやりにくくなっても、韓国から求められる送金ノルマは減らない。その分、信者たちの苦難は増した。従来から厳しかった献金要求が、さらに厳しくなったのだ。その結果、山上徹也容疑者の家庭のような悲劇が、日本中に広がったのである。
2012年2月12日、ソウル北部地方裁判所で、ある刑事裁判の判決が下された。認定された事実として、次の文章がある。
〈日本統一教会は、世界各国で行われる統一教会の事業を支援する募金の役割を主に担当して、本部の傘下に12の地区、55の教区、285の教会で組織されており、本部の会長とは別に、顧問格の総会長が、文鮮明(ムンソンミョン)総裁の意を日本統一教会に伝達しながら、日本国内献金募金を総指揮してきた〉
〈日本統一教会では、各地区、教区ごとに献金目標額を設定し、募金実績を確認して、各地域、教区別に統計を反映した実績表を出しており(以下略)〉
この裁判は、韓国人信者が「日本での献金活動に関する声明書」をネットに掲載したことが、日本を支配下に置いていた文総裁の四男・國進(クッチン)氏への名誉棄損に当たるか否かが争われたもの。裁判自体は、被告の無罪が二審で確定している。
上記に引用した判決文のポイントは、〈顧問格の総会長〉自身の法廷証言によって、認定がなされた点だ。
日本の統一教会は、表に立つ日本人の幹部はお飾りで、韓国から派遣されてくる幹部が牛耳っている。当時、日本の責任者として全国祝福家庭総連合会総会長の職にあったのが、宋栄錫(ソンヨンソク)氏。11年10月20日、検察側の証人として法廷に立った宋総会長に対して、日本での献金の実態を事細かに尋ねる質問が続いた。
〈弁護人 日本統一教会では、十分の一条以外に、甲7号証の1上の実績Bのための献金は、随時集められましたか。
宋 随時ではなく、常にです。日本は、献金を集めて世界各国を支援しなければなりません。
弁護人 期間を特別に定めるのでもなく、1年を通して献金を集めているのでしょうか。
宋 生活化しています〉
文鮮明の指示で献金額が決定
ここで言う〈十分の一条〉とは、一般のプロテスタント教会と同じく、収入の10%を献金すること。〈実績B〉については、集められた献金の総額がAで、人件費などの運営費を除いた額がBだと、宋総会長は説明した。全国の教会から、渋谷の統一教会本部へ送金される額がBだ。
〈弁護人 文鮮明は包括的な意味で献金を奨励し、証人が教会長に話をして、今年の献金はこれくらいして欲しいと話しているのでしょうか。
宋 献金に関する年中統計グラフがありますが、それを見て、このくらいやってこそ、世界を助けることになるのではないかと話しています〉
〈裁判官 献金の規模や金額については、証人が、文鮮明の指示を受けて総額を決定して下部に伝えますが、証人は、文鮮明から伝達を受けて献金の使う場所や使い道について、すべて知っているのでしょうか。
宋 知っている部分もあり、知らない部分もあります〉