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ベッドタウンを抜け、山が近づいた頃に駅舎が見えてきた

 山が近づいて牧歌的な車窓に……とはならないのがさすがの東京。どこまで行っても住宅地の中を走り続ける。通勤用とはいえ、特急まであるのはこうした沿線風景があってこそ。青梅線沿線は、少なくとも青梅駅まではベッドタウンの中を走ってゆく。

 ようやく山の雰囲気が色濃くなってきたと思ったところで、青梅駅に着く。青梅線は青梅駅が終点ではない。さらにその先、山の奥に線路を延ばし、奥多摩駅が終点だ。

 ただ、東京方面から直通してくる列車は青梅駅がいわば極限。「東京アドベンチャーライン」などという愛称を持つ奥多摩方面には、青梅駅で乗り継がねばならない。青梅駅まではそこそこ本数が多いのに、ここから先は1時間に1~2本。ローカル線か通勤路線か。その境界が青梅駅、という見方もできそうだ。

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 だいぶ山が近づいたところ、つまり多摩川の扇状地の扇頂に位置する青梅駅。少し手前の河辺駅などは駅周辺もかなり開けている平地なのに対して、青梅駅は駅舎のすぐ裏側には山がある。そのせいか、なんとなく空気がきれいな気がしてくる。心なしか、気温も都心よりはちょっと低いような。

 

レトロな看板を横目に駅の外に出ると…

 ホームから改札までは地下通路を抜けて。その通路の階段には、昔懐かし名作映画の手書き看板が掲げられている。駅だから、なのかわからないが、健さんの『鉄道員』も。『鉄道員』は北の雪に埋もれた小駅が舞台だが、青梅駅は東京の駅。なので、もちろんちゃんとSuicaも使うことができます。

 この映画看板は、2000年ごろから町を挙げて「昭和レトロ」を売り出したことがきっかけで掲げられるようになったものだとか。最近では、看板を描いていた職人が亡くなったこともあって、「昭和レトロ」を売り出すこともなくなったようだが、それでも駅の中には映画看板。肝心の駅舎だって、1924年に建てられたものをいまも大切に使っている。100年前だから、昭和レトロどころか大正レトロなんですが。

 

 駅の外に出る。駅舎の前には大きな駅前広場が待ち受ける。青梅市内を中心にあちこちに向かう都営バスののりばもここだ。都営バスは、ほとんどが23区内を走っているが、ここ青梅だけはなぜか京王やら西武やらの私鉄系バスではなく、都営バスのテリトリーだ。