東京の小学校に通っていた人は、幼少のみぎりにだいたいこんな話をする。「東京にも村があるって知ってる?」。東京は、大都会。村は、田舎。そういう前提のもとで、だからこそ東京には村なんてあるはずがないと思いきや……という、実に小学生らしい純粋なやりとりだ。

 で、その東京の村である。東京には実は村がたくさんある。数えると、8つ。埼玉県や神奈川県にはひとつしかないのに、東京都には8つも村がある。といっても、そのうち7つまでが島嶼部だ。三宅島も新島も小笠原諸島も青ヶ島も、村だ。ただ、ひとつだけ、島嶼部以外(つまり本州側)にも村がある。ご存知、檜原村である。

 件の小学生のやりとりは、おしなべて檜原村を指している。東京の大都会で暮らしている子どもたちは、日々の暮らしと地続きの東京に「村」があるのがなんとなくおもしろい、ということなのだろう。

ADVERTISEMENT

 かくいう筆者も、そんなやりとりをした記憶がないわけではない。そして、檜原村という存在を頭の片隅に残しつつ、大人になった。いったい、檜原村ってどんな村なのだろうか、という疑問を小さな箱の中に押し込んで。

 というわけで、檜原村に行くことにした。島嶼部を除いて東京で唯一の村には、何があるのか。

東京の“本州唯一の村”「檜原村」には何がある?

東京の“本州唯一の村”「檜原村」には何がある?

島嶼部を除いて東京で唯一の村「檜原村」が今回の目的地

 実は、わざわざ行かなくても、だいたい答えは出ている。何しろ、東京の西半分はひたすら山だらけだ。高尾山なんて学校の裏山レベルだと思えるくらいに険しい山々が延々と連なる。東京と埼玉、山梨の都県境にある雲取山は、東京最高峰の標高2017m。

 雲取山は檜原村でなく奥多摩町だが、檜原村とて似たようなもの。だから、登山・ハイキング系から渓流でBBQ系まで、ありとあらゆる自然系レジャーが揃っている。そういうアウトドア系を趣味にしている人にとって、檜原村はナゾでもなんでもないのだ。

 

 ただ、これで終わってしまっては、檜原村に行ったことがない人はつまらない。そこで、とにかく檜原村を目指すことにしたのである。