――大人になって「逃げる」ことに成功してから、育った家庭環境から受けた影響を感じることはありますか。逆に、環境が変わって良くなって感動したこと、気づいたことはありますか。
尾添 何でも一人で解決しようとします。家具のレイアウトも、冷蔵庫くらいなら持てるので人の助けを殆ど呼ばない。高熱を出して病院に行ったときは「危ない時は救急車を呼べ」と言われ、そりゃそうだなと。
「なんで一人で解決しようとするんだろう?」と考えてみた時、家では両親がいても一人で遊んでいたし、気管支炎で動けなくなってゴミ箱に排泄するまで弱った時も両親は病院に連れていかなかったな、と……。
限界まで何度も追い込まれて運よく生き残ってきただけだと気づいて、助けを呼ぶことは普通なんだと知りました。
環境が変わって良くなった部分は、健康面です。万年体調不良が治り、集中力も格段に上がりました。考え込んで落ち込むことも減って、精神的にも平和です。
――この本をどんな人に手にとってほしいですか。こんな風に読んでほしい、といったメッセージなどもあればお願いします。
尾添 『生きるために毒親から逃げました。』を出した2021年よりも、家族・親子・家庭、そして虐待に対する社会通念と意識は変わりつつあります。
この本は当事者を知ってほしくて描いた意図はなく、子供を作るのが嫌で逃げた話でもなく、家族から発生する問題の解決策のひとつを描きました。
結婚や離婚などと同等に、選択肢のひとつとして読んでほしいです。
大昔に形成された家父長制の概念が崩れ、世の中は変わりつつあります。いつか『生きるために毒親から逃げました。』を読んだ人が「昔はこんなに酷いことがあっても家族でいなきゃいけなかったのか」と思う日がくるのが楽しみです。
毒親を地獄に夜逃げさせません、この世から毒親が一人残らずいなくなるまで、漫画を描き続けます。