私たちは「家族をひらく」を30年近く理念に掲げ続け、家族で問題を抱え込まないように訴え続けてきましたが、「引きこもりは相談するもの」というイメージに変化したのは、ここ5年くらいではないでしょうか。
「引きこもりは家族の問題」というよりも「相談するもの」
私たちに届く相談の傾向では、最近は20代のお子さんを抱える親の割合がどんどん高くなっています。引きこもり期間が3年から5年程度で、親もネットで情報を得ています。この世代は「引きこもりは家族の問題」というよりも「相談するもの」というイメージが頭に入っており、比較的早く相談に動きます。
それに対し40代50代の子を抱える親の相談は時々しかなく、引きこもり年数は15年20年が当たり前、時には30年というケースもあります。それほどの年数が経ちながら、「こういった相談をするのは初めてです……」と小さな声で話される方もよくいらっしゃいます。
そもそも、「引きこもりは家族で解決すべき」と言われても、親だけでは解決が難しいのが実際のところです。その理由に、引きこもりの多様さがあります。
実は引きこもりの大半が、コンビニや趣味程度の外出をしています。それと同時に、家から全く出ないが家の中は自由に動き回る人から、自室をほとんど出て来ず親も何年も姿を見ていないという人までいます。
引きこもり始めのタイミングや状況も、学生時代の不登校からそのままという人もいれば、大学卒業など社会に出るタイミングで、最初の職場でつまずき数年で退職して、いくつも職を転々とするがどこにも落ち着けずに、10年以上勤めていた会社をリストラされて次の仕事を探すこともできず、という人もいて本当に様々です。
うつや統合失調症、強迫性障害といった病気がある人もいれば、全く病気のない健康な人もいます。病気がある人にも、もともと病気があって引きこもりになった人と、引きこもるうちにだんだん病気になっていった人がいます。発達障害の有無もあります。
人間関係も、引きこもる前は友達がたくさんいた人、子どものころから友達作りが苦手でポツンと1人でいた、または友達はいたが1人2人だったという人の両方のパターンがあります。
親子の関係も、楽しくおしゃべりできて仲良く買い物に行く人、話しかければポツポツと返事はしてくれる人、手紙やメールでは返事が来るという人、とにかく親を避ける人、暴力までふるう人と、本当に色んなケースがあります。
こういったパーツを組み合わせると、無限とは言わないまでも、かなりの数のパターンが存在します。親だけで対応しようとしても事実上、無理に近いのです。