最悪の場合、親が子どもを殺す・子どもが親を殺すケースも……なぜ「子供の引きこもり問題」を、親だけで解決していけはいけないのか? 認定NPO法人ニュースタート事務局として長年、引きこもり問題解決のために奮闘する二神能基氏、久世芽亜里氏による新刊『引きこもりの7割は自立できる』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全4回の2回目/#3を読む)
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家に抱え込んだら長期化まっしぐら
家庭内解決を目指すけれども、家庭の中に解決策が見つからない。引きこもりの子どもを「家に抱え込んだ」状態のまま、ズルズルと時間が過ぎていく。するとどうなるか。この答えは、内閣府の調査(平成30年)を見れば一目瞭然です。中高年の引きこもりのうち7割が3年以上、5割が7年以上、3割が10年以上で、30年以上も存在するという結果となっています。
更にどこかに相談したことがあるかという問いには、あるが44.4%、ないが55.6%です。それぞれの数字の結びつきまでは分かりませんが、相談したことがない人が多く、とにかく引きこもりとは長期化するものなのだ、というイメージが生じるのも無理はありません。
農水省元事務次官の長男殺害事件では親が子どもを殺していますが、引きこもる我が子に親が殺されるという事件も多発しています。亡くなった親を放置したまま同じ家で暮らすなどの死体遺棄事件もよく耳にします。病死した親の横で何もできなかったのか、親子が亡くなった状態で発見されることも珍しくありません。問題を家庭で抱え込み、どうやって外に助けを求めるのかが分からなくなっているのです。
親が子どもを殺す・子どもが親を殺す・親が死んでも子どもは何もできず事件になって発見される。これらは問題を限界まで家で抱え込んだ結果です。特に3パターン目は、長期引きこもりのいる家庭の多くが心配するべきものです。どんなに貯金を遺しても、何かを手続きした経験もなく、困っても人に何も聞けないという状態では、本人は事態を動かしようがありません。
家に長く抱え込んだ末に私たちのところに相談に来られる親は、どこかで諦めのような気持ちになっている方が大半です。それでも何かを機に、例えば8050問題になった、または数年後にそうなると実感して、ようやく相談にみえられます。
ですが相談の後も、決心して支援を依頼する親と、「家の中で抱え込む癖」が出て相談だけで終わってしまう親に分かれます。引きこもりが長期化・高齢化しているほど、後者になる可能性は高いと言えます。40代以上の子を抱える親の相談が少ない上、相談してもまた抱え込む判断をする親が多いため、引きこもりが多い年代のはずなのに支援している数は少ないのが実情です。
また親が相談に動かないため、きょうだいだけが相談に来ることは近年かなり増えました。ですが親と引きこもり当事者だけが同居し、きょうだいは独立し実家を離れている状況では、抱え込んでいる現状を打破するのはなかなか難しい。きょうだいが親に「何とかして」と訴えても「あなたに迷惑はかけないから」と言われる、本人に「いい加減仕事しなよ」と話すと「本人が落ち込んでしまったので、厳しいことは言わないでちょうだい」と親から連絡が来る、といった具合です。