埼玉県本庄市。築50年余の借家床下から、土中に埋められた柿本歩夢くん(当時5)の遺体が発見されたのは、2022年3月5日のことだ。幼い歩夢くんは、実の母親を含む大人たちから1年にわたる厳酷な虐待を受けた末、同年1月に絶命した。
事件を巡っては、歩夢くんの母・柿本知香(当時30)、借家の借主の丹羽洋樹(当時34)と内縁の妻・石井陽子(当時54)の3人が逮捕され、傷害致死、死体遺棄などの罪に問われた。
9月8日、さいたま地裁は、知香に懲役10年(求刑12年)、丹羽に懲役12年(同15年)の有罪判決を言い渡した(ともに地裁判決を不服として東京高裁に控訴)。
「同時に行われた2人の裁判では、一連の犯行を石井が主導した点で主張が一致。歩夢くんの事件に加え、元同居人だった個人の年金詐欺事件等でも起訴されている石井は、分離して裁判が行われることになりました」(司法担当記者)
居候させた柿本母子を支配下に置き、内縁の夫である丹羽にさえ、本名、実年齢、経歴を偽って交際を続けてきた虐待死事件の元凶――。石井の裁判員裁判が、11月8日から始まっている。
初公判では、知香と丹羽の裁判でも取り上げられた虐待の数々だけでなく、新たに石井の“単独犯行”も明かされた。
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同居開始直後から“躾”と称する虐待が始まった
初公判を傍聴した石井の知人が明かす。
「でっぷりした体形だったはずの石井は、ガリガリに痩せていて、まるで別人のようでした。以前は3Lや4Lの服を着ていたのに、体が3分の1ほどに萎んだ感じ。休廷の時、こちらを向いてしおらしく頭を下げていましたが、法廷で明かされる非道な犯行とのギャップがあり過ぎて、見え透いたパフォーマンスに見えました」
夫のDVから逃れ、行き場所を失っていた柿本母子が、現場の借家で石井らと同居を始めたのは、2021年1月11日。歩夢くんに対する“躾”と称した虐待は、同居開始の直後から始まっていた。
同月31日。歩夢くんは「返事をしなかった」として、母の知香から叱られていた。そして、知香は石井に言われるがまま、我が子に手を上げる。
「首根っこ掴んできて」
「もうダメ。ほっぺ、ペシン」