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頬を「平手打ち」し、「ゲンコツ」を振り下ろす

「同居を始めてから、石井さんに『躾が厳しすぎる』『やり過ぎではないか』と言ったことがあります。石井さんは『だったら自分たちで生活すれば? もう面倒みないから』と言いました。行き場所もお金もなく、住まわせてもらっている身だったので、言いづらくなりました。石井さんは元保育士と聞いていましたし、私の育て方が甘いのかなとも思いました」(知香)

 夫やX子さんと暮らしていた時期、知香が歩夢くんに手を上げることはなかったというが、本庄の家では、あっさりと石井の色に染まっていく。

「『叩かれないと返事できないの?』って聞いてみ」

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 知香は、石井に言われるがまま、オウム返しのように歩夢くんを𠮟責。我が子の頬を平手打ちし、ゲンコツを振り下ろした。保育園の保護者の間でもスレンダーな美人として知られた知香だったが、現場の家に取り込まれて以降、化粧もしなくなり、髪もボサボサで、みるみるみすぼらしくなっていった。

 そして2022年1月18日――。歩夢くんがご飯を食べながらお漏らししたことに腹を立てた石井は、知香に「相撲をとったら?」と指示。知香は大外刈りのような技を小さな身体に繰り返した。受け身など取れるはずもない歩夢くんは、母に投げ飛ばされ、泣いていた。

我が子を抱きかかえ、うろたえるしかなかった知香

 石井の指示で知香と交代した丹羽が、歩夢くんを畳の床に2度叩きつける。歩夢くんは後頭部を強打し、意識を失った。法廷で紹介された専門医の証言によれば、この段階ではまだ救命の余地があったという。

 だが、虐待の発覚を恐れた3人は誰一人救急車を呼ぼうとせず、歩夢くんはオロオロと抱きかかえるだけの知香の腕の中で息絶えていった。

 当時、知香は夫との離婚がまだ成立していなかった。石井は、歩夢くんの死が発覚すれば、遺体は夫の元に引き渡されると示唆。知香は「それだけはイヤ」と、この時だけは強い意思表示をした。すかさず石井が告げる。

「畳を上げると、下は土になっている。土葬というかたちで埋めればいい」

 翌1月19日の朝、知香と丹羽は、家にあった備中鍬、剣先スコップ、シャベルで床下の土を掘った。石井はほとんど手伝わなかったという。

「埋める前に、形見にしようと歩夢の髪を切ってジップロックに入れました。耳や鼻にコットンを詰め、お腹の上に歩夢が好きだった仮面ライダーのベルトを置くと、丹羽さんが持ってきた粉(生ゴミ発酵促進防虫脱臭剤)をその上から撒きました。土を被せた後、青いビニールシートをかけました」(知香)

柿本知香被告(ANNより)

 警察の捜査が迫った2022年3月。真っ先に完落ちしたのが知香だった。石井の裁判に証人出廷した知香は、こう語った。

「母として守ってあげられませんでした。私も手を出していて、亡くなる原因ではなかったとしても、その場にいて関わったのは事実です。刑務所に入るのは覚悟しています。石井さんにも重い刑をお願いしたいと思います」

 石井は傷害致死、死体遺棄、暴行、監禁、詐欺など12の事件で罪に問われているが、傷害致死のみ否認している。