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“愛”という感情に対して、自分なりの答えを見出した生徒を演じる

 平成が“答え”ならば、令和の学園ドラマがもたらすのは“気づき”だといえるだろう。『最高の教師』の九条が生徒に伝えつづけていたのは「自分の頭で考えることこそが重要」というメッセージだった。たとえ正解にたどりつけなかったとしても、正解のない問いかけだったとしても、考えつづけることが大事なのだと。そのために教師はときに手を取り、ときに発破をかけて、生徒に寄り添う。

 愛流が演じた栖原竜太郎も正解のない“愛”という感情に対して、自分なりの答えを見出した生徒だった。「世界はとてもイージーなもの」をモットーに日々を過ごす栖原は、難しいことは考えず、何にも縛られない。

 そんな栖原にも心を寄せるクラスメイトがいる。クラスの中心グループにいながらも、その居場所を失うことを恐れる江波美里(本田仁美)だ。その江波に目をつけた幼なじみの大学生が、彼女の孤独につけ入り、恋人のフリをして売春グループに誘うのだ。

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 面倒ごとに巻き込まれたくない栖原は当初は深く関わろうとはしなかったが、九条から「愛情という本能的な人間関係の欠如を教師が理屈を振りかざしてどうすることもできない」と言われたことで、江波と、そしてなにより、江波を好きな自分と対峙することを決める。

窪塚愛流と本田仁美(『最高の教師』公式SNSより)

 自分の居場所はどこにあるのか。そんな江波の問いかけに、考えて、考えて、考え抜いた栖原はカラッとした笑顔で答える。

「ねぇよ! 居場所なんて」

「でもさぁ、別に無くたって良くない? 生きて立ってるってだけで充分じゃん」

「誰かと同じであることを必要以上に求めなくたっていいんだよ」

「誰かが必要としてくれる居場所を必死に求めなくたっていいんだ」

 こうした、江波という少女を超えて、画面の前にいる視聴者に訴えかけるような、強いメッセージを放つ愛流の姿は、22年前の窪塚を思い出させた。