ホームレス生活2年目になる男性と寝食をともにしたライターの國友公司氏。そこでわかった、台風や飢餓よりも恐ろしい「ホームレス人生最大の危機」とは一体?
取材のために2021年7月23日~9月23日までの約2ヶ月間をホームレスとして過ごした國友氏の新刊『ルポ路上生活』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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豊富な炊き出し
平日は土日に比べて炊き出しが少ないのでどうなることかと思っていたが、私の食料袋にはアルファ化米、白人部隊がくれたおにぎりとソイジョイにカップ麺2つとコッペパンもある。
明日は池袋にある通称“うなぎ公園”に行けば、「TENOHASI」という団体から弁当が2つはもらえる。黒綿棒(先輩ホームレス)を誘ったが、「池袋まで歩いて弁当2つは完全に損だし、五輪の交通規制がウザそう」と行こうとしない。この団体は月に10回ほど炊き出しを行っている(ネットの情報とは異なる)が、そのうちの2回、ものすごい量の食料をくれる日があるといい、その日だけ行けば十分だそうだ。
飯の心配をする必要もなくなり、することがなくなった。となりで黒綿棒が弾いているギターの音をひとしきり聴き、新宿住友ビルに涼みに行く。ここは冷房の効いたホールに机と椅子が並べられているので、私は重宝している。汗だくで不快なときに逃げ込むと、30分ほどでシャワーを浴びたかのように身体がサラサラになる。
ホールで吾妻ひでお著の『失踪日記』を読む。この漫画は、吾妻ひでおが実際にホームレス生活を送っていたときのエピソードをまとめた漫画である。この生活が辛くて仕方がないときに読んで、やる気を出そうと持ってきたものだったが、あまりの暇さから早くも読み始めてしまった。
一時間ほどしてベースに戻ると、黒綿棒はタオルで顔を隠すことなくスヤスヤと眠っていた。島野君(黒綿棒と一緒に暮らす若いホームレス)は夢中になってニンテンドーDSでドラクエをプレイしている。