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「ギャラ配分は声優が8割、事務所が2割」それでも新人声優が「食っていく」のが難しすぎるワケ

『アイドル声優の何が悪いのか? タレントとしての声優マネジメント』より #1

genre : ライフ, 芸能

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 つまり、家賃が安いからと言って地方や郊外に住むと交通費がバカにならないため、多少高くても都内を拠点にしないと色々と具合が悪いのです。そんなことも鑑みつつ、ひとまずここでは計算しやすいので「食べていける」最低レベル=20万円をわかりやすい数字と仮定して進めましょう。

声優業で20万円稼ぐとしたら?

 声優はフリーランスで仕事される方もいますが、とくに新人であれば事務所に所属するのが一般的です。そして事務所に所属するということはほとんどの場合「事務所の社員として毎月の固定給がもらえる」ということではありません。声優は個人事業主として事務所と契約し、受けた仕事からギャランティーを配分される歩合制がほとんどです。ある程度の固定給が設定され、仕事量によって報酬が上乗せされるケースもありますが、ここでは完全歩合制を想定しましょう。

 さて、新人声優が20万円を稼ぐには所属事務所にいくら入ればよいでしょうか?

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 声優/声優事務所のギャランティーの配分比率は、事務所によって違いますが声優が8割、事務所が2割というのがかつてよく言われてきたスタンダードです(最近は変わってきています)。

 これに対してテレビタレントなどが活躍する一般的な芸能界で芸能事務所からタレントが得る報酬の比率をご存じの方は、「え? 声優ってそんなにもらえるの?」って驚かれることでしょう。ちなみに芸能界ではタレントの取り分は概ね4~6割です(もっと少ないこともあります)。そういった芸能界のタレントからしたら「声優ってそんなにもらえるんだ」「いいなぁ!」という感覚です。

 配分だけ見ると、「声優業界って良心的だなー」って思われるかもしれません。ですがギャランティーの配分がタレント>>事務所であることが、本当にタレントにとって良いことなのか……これは実は単純に比較できないことなんです。そして声優業界と芸能界のギャランティー配分比率の差は、それぞれの業界の体制の差に深く関わる部分ですので、後ほど詳しく掘り下げます。

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