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「ギャラ配分は声優が8割、事務所が2割」それでも新人声優が「食っていく」のが難しすぎるワケ

『アイドル声優の何が悪いのか? タレントとしての声優マネジメント』より #1

genre : ライフ, 芸能

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 さて、声優が8割、事務所が2割と設定して声優が月20万もらう場合、声優事務所には25万円の収入がなければいけません(税金などで引かれる部分は複雑になるのでいまは考えないようにします)。25万円に到達するには、声優はどのくらい働けばよいのでしょうか。

声優のギャランティーはランク制

 声優のギャランティーには、ランク制というものが採用されています。声優として仕事を始めてから数年間は「ジュニアランク」。30分枠のテレビアニメ1話当たりのギャランティーは1万5千円です。以降は経験年数とともに自動的にランクが上がり、最終的に「Aランク」になると1本当たりの出演料は4万5千円になります(実際はここに転用費など加わりますので、数字は変わります)。

 これが、声優が声優としての仕事で得られる、一般的に定められた金額です。

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写真はイメージ ©getty

 この仕組みには、新人の頃、どれだけ出番やセリフが少ない役であっても最低限のギャランティーが保証されるというメリットがあり、一概に否定できるものではありません。一方で単純にランクが上がる=ギャラが上がるということではなく、出演料が上がってしまったことで起用される機会が減少する可能性があります。結果としてベテランになるほど仕事が減り、総収入も減ってしまう……といったことも発生しうるのです。このため、ずっと1万5千円を通す人もいます。

 すごく人気のある声優になれば、交渉によってギャランティーを決めることもできなくはありません。こうした「ノーランク」と呼ばれる声優もいますが、極めて例外的です。

 さて、ランク制の功罪はここでは考えません。テレビアニメの声の出演で、25万円のギャランティーを目指すとしましょう。

 30分枠のテレビアニメのギャラは、新人で1話につき1万5千円。ということは、月に4タイトル計16話分出演しても24万円で、目標の25万には達しません。

 つまり、テレビアニメだけだと、週4本のレギュラーをこなしても月収20万円には満たない。そして裏を返せば、週4本のレギュラーがある声優が所属していても、事務所の取り分は月5万円にも満たないのです。

「ギャラ配分は声優が8割、事務所が2割」それでも新人声優が「食っていく」のが難しすぎるワケ

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