打率10割の時に100%と思える
バッターは3割打ってすごいと言われますけど、やっぱり一度のミスもなく打率10割の時に100%と思えるんじゃないですかね
(「道ひらく、海わたる」P305)
「野球は失敗のスポーツ」と言われるのは、プロにおいて好打者と呼ばれる3割バッターであっても、残りの7割は打ち損じているからです。あるいは、かつての好投手がよく言っていた「マウンドに上がる時にはいつだって完全試合を目指している。四球を出したらノーヒットノーランを目指し、ヒットを打たれたら完封を目指す」も、現実には完全試合やノーヒットノーランは滅多にできるものではありませんし、投手の分業制が進む時代には完封さえ現実的な目標ではなくなっています。
大谷翔平はこうした野球の現実を踏まえたうえで、途轍もない目標を掲げています。「自分のバッティングがどれぐらいのパーセンテージまで来ているのかがわからないし、何を持って100%と思えるのかもわからない。ただ、バッターは3割打ってすごいと言われますけど、やっぱり一度のミスもなく打率10割の時に100%と思えるんじゃないですかね」
途轍もない目標ですし、投手という相手がいる以上、すべての試合で「打率10割」を達成できるとは思えませんが、そんなあり得ない目標を追い求めるからこそ大谷は常に変わることができるし、絶えず進化していくことができるとも言えます。人がどこまでいけるかは「目線の高さ」で決まるものなのです。
常に研究や練習を怠らず、自分をアップデートさせる
去年がそこそこ良かったので、去年と同じような成績を残そうと思っていたら、その基準をクリアするのさえ難しい
(「Number」1048 P15)
プロ野球の世界に「2年目のジンクス」という言い方があります。たとえば入団1年目に素晴らしい成績を上げた選手でも、翌年になると成績がガクッと落ちることがあるのがプロの世界です。
大谷翔平は2021年にМVPをとるほどの活躍をしますが、その翌年も同様の活躍をして、2023年もホームラン王を取る勢いで打ち続けています(本稿執筆時点)。その姿を見た元メジャーリーガーが「いずれ失速すると思っていたが」と言っていました。それほどにメジャーリーグの競争は激しく、大谷が活躍すればするほど、大谷を攻略するための研究も進むわけですから、МVP級の活躍を2年、3年と続けるのはそれだけで驚嘆に値することなのです。そんな厳しさを知るだけに、大谷はこう話しています。